八月の兼題 「原爆忌」
2023年08月17日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第百七号(令和五年八月)
八月六日、七八回目の原爆の日を迎えた。住川雄一さんの作品展『感謝〜ひまわりとの出逢い〜』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の六名を含めて十二名となった。

sketch by Yuichi Sumikawa
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「原爆忌」
◎真白なる母の髪切る原爆忌 麦
新聞を食べて孤児なり原爆忌 七軒
戦争は二度とごめんと原爆忌 厚子
焼けし道生き抜きて母広島忌 六星
をちこちで鐘がなるなり原爆忌 ねむ女
条幅の墨色は濃し広島忌 たつみ
黙示録読みて聲なき原爆忌 斑猫
高き雲ますます高く原爆忌 進
ガン患らふ友は被爆者広島忌 走波
献水のぬるくなりにし原爆忌 朋子
爆心地本日の白き白き雲 えこ
○工兵橋残されてゐる広島忌 茂樹
当季雑詠
◎蝉しぐれ朝のブラシに絡みつく 麦
はや過ぎし六十年に打ち水す 麦
寄席はねて橋渡らんと夜の秋 七軒
百合の香を鼻腔でまはす舞台袖 七軒
わけも無くため息をつく初秋かな 厚子
笑み誘ふハート歪みし揚花火 厚子
ハト追いの幼子はあっかんべー 六星
蝉時雨いよよ一匹見つけたり 六星
○空蝉のしかと掴める草の蔓 ねむ女
夫の書を曝してゐたる原爆忌 ねむ女
○子ども用プール干されし日陰かな たつみ
○教科書を捨つ白昼の蝉時雨 たつみ
月に悪魔大腿骨の笛を吹く 斑猫
スフィンクス謎問う道の星月夜 斑猫
帚木の影も揺らめく日差しかな 進
ひぐらしや鳴くにまかせて通り雨 進
遠雷や木々ざわめける雨の予感 走波
放水路川原にテントの五・六張り 走波
◎亀(かめ)嵩(だけ)の短かき蕎麦や清張忌 朋子
合歓の花午後の列車はあと五分 朋子
あさがほのゆつくり呼吸する早朝 えこ
八月の郵便配達顔真っ赤 えこ
新涼や少し明るいジャズ喫茶 茂樹
八月の雲広島へのしかかる 茂樹
(句会寸描)
*兼題は、麦さんが一位となった。雑詠は、大接戦の末、麦さんと朋子さんが一位を分け合った。兼題は、爆心地ならではの体験的な句が目を引いた。雑詠は夏を惜しむような句が多かった。
*兼題「原爆忌」
◎真白なる母の髪切る原爆忌 麦
動作を描写しただけで一切感情が入っていない。淡々とした語り口の中に、お母様へのやさしい眼差しと、これまでに様々な思いが伝わってくる。
○工兵橋残されてゐる広島忌 茂樹
名前の通り、かつては、兵隊さん専用の橋であった。あれから七十八年の歳月が過ぎ、老朽化により一度架け替えられたが、今も健在で、学生や一般市民に広く利用されている。

*当季雑詠
◎蝉しぐれ朝のブラシに絡みつく 麦
最盛期には、朝からうんざりするような蝉の大合唱である。下五の「絡みつく」が、鬱陶しい感じを上手く捉えている。
◎亀(かめ)嵩(だけ)の短かき蕎麦や清張忌 朋子
清張の「砂の器」のロケ地として有名な亀嵩駅である。作者は現地で蕎麦をいただきながら、映画や小説のその場面に思いを馳せている。

○空蝉のしかと掴める草の蔓 ねむ女
「空蝉」は、いろんな場所で見ることができるが、「草の蔓」は珍しい。中七の「しかと掴める」に蝉誕生の神秘的な力強さを感じる。
○子ども用プール干されし日陰かな たつみ
日向の「子ども用プール」で、元気にはしゃいでいた姿が目に浮かぶ。昔は夏休みになるとよく見かけたが、最近では、この光景も珍しくなった。
○教科書を捨つ白昼の蝉時雨 たつみ
捨てるものが「教科書」というのが、いろいろと想像力をかきたてる。「白昼の蝉時雨」が、どこか劇的な感じがする。
*次回予定
日時 九月十日(日)十八時〜二十時
【いつもの第一日曜日ではありません】
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「赤蜻蛉」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
八月六日、七八回目の原爆の日を迎えた。住川雄一さんの作品展『感謝〜ひまわりとの出逢い〜』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の六名を含めて十二名となった。

sketch by Yuichi Sumikawa
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「原爆忌」
◎真白なる母の髪切る原爆忌 麦
新聞を食べて孤児なり原爆忌 七軒
戦争は二度とごめんと原爆忌 厚子
焼けし道生き抜きて母広島忌 六星
をちこちで鐘がなるなり原爆忌 ねむ女
条幅の墨色は濃し広島忌 たつみ
黙示録読みて聲なき原爆忌 斑猫
高き雲ますます高く原爆忌 進
ガン患らふ友は被爆者広島忌 走波
献水のぬるくなりにし原爆忌 朋子
爆心地本日の白き白き雲 えこ
○工兵橋残されてゐる広島忌 茂樹
当季雑詠
◎蝉しぐれ朝のブラシに絡みつく 麦
はや過ぎし六十年に打ち水す 麦
寄席はねて橋渡らんと夜の秋 七軒
百合の香を鼻腔でまはす舞台袖 七軒
わけも無くため息をつく初秋かな 厚子
笑み誘ふハート歪みし揚花火 厚子
ハト追いの幼子はあっかんべー 六星
蝉時雨いよよ一匹見つけたり 六星
○空蝉のしかと掴める草の蔓 ねむ女
夫の書を曝してゐたる原爆忌 ねむ女
○子ども用プール干されし日陰かな たつみ
○教科書を捨つ白昼の蝉時雨 たつみ
月に悪魔大腿骨の笛を吹く 斑猫
スフィンクス謎問う道の星月夜 斑猫
帚木の影も揺らめく日差しかな 進
ひぐらしや鳴くにまかせて通り雨 進
遠雷や木々ざわめける雨の予感 走波
放水路川原にテントの五・六張り 走波
◎亀(かめ)嵩(だけ)の短かき蕎麦や清張忌 朋子
合歓の花午後の列車はあと五分 朋子
あさがほのゆつくり呼吸する早朝 えこ
八月の郵便配達顔真っ赤 えこ
新涼や少し明るいジャズ喫茶 茂樹
八月の雲広島へのしかかる 茂樹
(句会寸描)
*兼題は、麦さんが一位となった。雑詠は、大接戦の末、麦さんと朋子さんが一位を分け合った。兼題は、爆心地ならではの体験的な句が目を引いた。雑詠は夏を惜しむような句が多かった。
*兼題「原爆忌」
◎真白なる母の髪切る原爆忌 麦
動作を描写しただけで一切感情が入っていない。淡々とした語り口の中に、お母様へのやさしい眼差しと、これまでに様々な思いが伝わってくる。
○工兵橋残されてゐる広島忌 茂樹
名前の通り、かつては、兵隊さん専用の橋であった。あれから七十八年の歳月が過ぎ、老朽化により一度架け替えられたが、今も健在で、学生や一般市民に広く利用されている。

*当季雑詠
◎蝉しぐれ朝のブラシに絡みつく 麦
最盛期には、朝からうんざりするような蝉の大合唱である。下五の「絡みつく」が、鬱陶しい感じを上手く捉えている。
◎亀(かめ)嵩(だけ)の短かき蕎麦や清張忌 朋子
清張の「砂の器」のロケ地として有名な亀嵩駅である。作者は現地で蕎麦をいただきながら、映画や小説のその場面に思いを馳せている。

○空蝉のしかと掴める草の蔓 ねむ女
「空蝉」は、いろんな場所で見ることができるが、「草の蔓」は珍しい。中七の「しかと掴める」に蝉誕生の神秘的な力強さを感じる。
○子ども用プール干されし日陰かな たつみ
日向の「子ども用プール」で、元気にはしゃいでいた姿が目に浮かぶ。昔は夏休みになるとよく見かけたが、最近では、この光景も珍しくなった。
○教科書を捨つ白昼の蝉時雨 たつみ
捨てるものが「教科書」というのが、いろいろと想像力をかきたてる。「白昼の蝉時雨」が、どこか劇的な感じがする。
*次回予定
日時 九月十日(日)十八時〜二十時
【いつもの第一日曜日ではありません】
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「赤蜻蛉」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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