七月の俳句会 「虫偏の句」
2023年07月12日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第百六号(令和五年七月)
この日は、半夏生と重なり、最近では珍しく一日中よく晴れた。佐藤豪さんの絵画展『写実油彩 と 空想絵本アートⅡ』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の五名を含めて十五名となった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)

兼題 「虫偏の句」
鎌首を擡(もた)ぐる蛇と目が合ひぬ ねむ女
幾百の蟷螂生る吾の庭に 走波
〇雨蛙やっとしっぽの取れたとこ 麦
七年と七日の蝉(せみ)生(せい)尊(たっと)し哉(や) 彩鳥
雨粒に擬死する夜や蟻地獄 斑猫
蛸切つて酒を冷やせば夕餉かな 進
沈黙の寄合に蝿の一匹 中中
蜘蛛の囲や旅路の果てにもスタバかな 朋子
池に波泳げないのねこがね虫 風外

真円の塒(どくろ)静かに蝮かな 厚子
アクリルに身動きできぬ蠍(さそり)かな 七軒
夏草の蔓の螺旋の躍るごと えこ
◎醤油屋の三和土へ入る糸蜻蛉 茂樹
蝸牛すみかは現代美術館 六星
蜘蛛追ひし犬の毛拾ふ夕かげり たつみ
当季雑詠
◎徐に梁をゆきたり青大将 ねむ女
蝮酒飲んで蛇の子生(あ)れしとふ ねむ女
◎竹林をさやさや抜けて夏時雨 走波
句を作り落款をおす梅雨一日(ひとひ) 走波
モリアオガエル水面めざして一直線 麦
つま先をはじけて水たま沈下橋 麦
カラカラと風鈴の音が邪気払い 彩鳥
今どきは心安らぐ草いきれ 彩鳥
風死す日サロメ舞おりグロリオサ 斑猫
回帰熱少女炎暑に震えをり 斑猫
雨上がり白の輝く半夏生 進
夕立の境目見えし峰の雲 進
ハンぺルマンのごと羽広ぐ兜虫 中中

○ががんぼの揺らぎや白昼の画廊 中中
開け口のわかりにくさや戻り梅雨 朋子
色あせし扇子の房や去年の夢 朋子
八重の蓮なぜか品なき浄土花 風外
かえる鳴く強く叫んで友を呼ぶ 風外
○侍の映画を観たり夏の昼 厚子
風吹きて水面をたたく緋鯉の尾 厚子
夕凪の煙草の煙外野席 七軒
赤城山里のわら屋の洗鯉 七軒
夏山よ地球は皺である山よ えこ
○夏休み螺子巻く祖父の古時計 えこ
扇風機向ひ合せの中にゐる 茂樹
○六本の胡瓜をならべ定規置く 茂樹
どくどくと六月尽の川走る 六星
水曜日歯医者へ向かふ夏日かな 六星
端居して庭園の葉を眺めたり たつみ
縮こまる背中を延ばし青田風 たつみ
(句会寸描)
*兼題は、茂樹が一位となった。雑詠は、大接戦の末、ねむ女さんと走波さんが一位を分け合った。兼題は、バラエティーに富んだ「虫偏」が集まった。兼題・雑詠共、七軒さん提供のコピー機のおかげで、鑑賞の時間がたっぷり取れて、大いに盛り上がった。
*兼題 「虫偏の句」
◎醤油屋の三和土へ入る糸蜻蛉 茂樹
「醤油屋の三和土」は、だいたい薄暗くなっているので、「糸蜻蛉」の雰囲気と合うのではないかと思った。
〇雨蛙やっとしっぽの取れたとこ 麦
口語調の表現が軽快である。新米の「雨蛙」は、これからどのような世界を見るのだろう。
*当季雑詠
◎徐に梁をゆきたり青大将 ねむ女
「徐に」と「青大将」が上手く響き合って、堂堂とした様子が読み取れる。実際に見たことはないが、かなりの迫力なのだろうう。
◎竹林をさやさや抜けて夏時雨 走波
「夏時雨」は、なかなかお目にかからない季語。「さやさや」の擬態語と共に、「夏時雨」が気持ちのよい涼しさを上手く引き出している。
○ががんぼの揺らぎや白昼の画廊 中中
「ががんぼ」と「画廊」の取合せがユニーク。中七から下五に掛けてのぎこちない破調感が、かえって効果的で「ががんぼ」らしさが出ている。
○侍の映画を観たり夏の昼 厚子
子供の頃、夜の町内の広場でチャンバラ映画を観た記憶があるが、時代が変わり、今は冷房の効いた室内で鑑賞を楽しんでいる。侍映画の痛快さが夏に似合う。
○夏休み螺子巻く祖父の古時計 えこ
「古時計」が今も動いているのが素晴らしい。お祖父さんの時代の柱時計か、愛用の腕時計か、どちらでも想像出来る。
○六本の胡瓜をならべ定規置く 茂樹
家庭菜園で、今年一番の収穫となったので、定規と共に写真を撮った。
*次回予定
日時 八月六日(日)十八時~二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「原爆忌」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
ーーーーーーー
今朝の中国新聞の記事に四國五郎さんと息子の光さんのことが出ています。
小さな手帳に書かれたシベリアでの日記など、私も何度も観に行きました。

この日は、半夏生と重なり、最近では珍しく一日中よく晴れた。佐藤豪さんの絵画展『写実油彩 と 空想絵本アートⅡ』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の五名を含めて十五名となった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)

兼題 「虫偏の句」
鎌首を擡(もた)ぐる蛇と目が合ひぬ ねむ女
幾百の蟷螂生る吾の庭に 走波
〇雨蛙やっとしっぽの取れたとこ 麦
七年と七日の蝉(せみ)生(せい)尊(たっと)し哉(や) 彩鳥
雨粒に擬死する夜や蟻地獄 斑猫
蛸切つて酒を冷やせば夕餉かな 進
沈黙の寄合に蝿の一匹 中中
蜘蛛の囲や旅路の果てにもスタバかな 朋子
池に波泳げないのねこがね虫 風外

真円の塒(どくろ)静かに蝮かな 厚子
アクリルに身動きできぬ蠍(さそり)かな 七軒
夏草の蔓の螺旋の躍るごと えこ
◎醤油屋の三和土へ入る糸蜻蛉 茂樹
蝸牛すみかは現代美術館 六星
蜘蛛追ひし犬の毛拾ふ夕かげり たつみ
当季雑詠
◎徐に梁をゆきたり青大将 ねむ女
蝮酒飲んで蛇の子生(あ)れしとふ ねむ女
◎竹林をさやさや抜けて夏時雨 走波
句を作り落款をおす梅雨一日(ひとひ) 走波
モリアオガエル水面めざして一直線 麦
つま先をはじけて水たま沈下橋 麦
カラカラと風鈴の音が邪気払い 彩鳥
今どきは心安らぐ草いきれ 彩鳥
風死す日サロメ舞おりグロリオサ 斑猫
回帰熱少女炎暑に震えをり 斑猫
雨上がり白の輝く半夏生 進
夕立の境目見えし峰の雲 進
ハンぺルマンのごと羽広ぐ兜虫 中中

○ががんぼの揺らぎや白昼の画廊 中中
開け口のわかりにくさや戻り梅雨 朋子
色あせし扇子の房や去年の夢 朋子
八重の蓮なぜか品なき浄土花 風外
かえる鳴く強く叫んで友を呼ぶ 風外
○侍の映画を観たり夏の昼 厚子
風吹きて水面をたたく緋鯉の尾 厚子
夕凪の煙草の煙外野席 七軒
赤城山里のわら屋の洗鯉 七軒
夏山よ地球は皺である山よ えこ
○夏休み螺子巻く祖父の古時計 えこ
扇風機向ひ合せの中にゐる 茂樹
○六本の胡瓜をならべ定規置く 茂樹
どくどくと六月尽の川走る 六星
水曜日歯医者へ向かふ夏日かな 六星
端居して庭園の葉を眺めたり たつみ
縮こまる背中を延ばし青田風 たつみ
(句会寸描)
*兼題は、茂樹が一位となった。雑詠は、大接戦の末、ねむ女さんと走波さんが一位を分け合った。兼題は、バラエティーに富んだ「虫偏」が集まった。兼題・雑詠共、七軒さん提供のコピー機のおかげで、鑑賞の時間がたっぷり取れて、大いに盛り上がった。
*兼題 「虫偏の句」
◎醤油屋の三和土へ入る糸蜻蛉 茂樹
「醤油屋の三和土」は、だいたい薄暗くなっているので、「糸蜻蛉」の雰囲気と合うのではないかと思った。
〇雨蛙やっとしっぽの取れたとこ 麦
口語調の表現が軽快である。新米の「雨蛙」は、これからどのような世界を見るのだろう。
*当季雑詠
◎徐に梁をゆきたり青大将 ねむ女
「徐に」と「青大将」が上手く響き合って、堂堂とした様子が読み取れる。実際に見たことはないが、かなりの迫力なのだろうう。
◎竹林をさやさや抜けて夏時雨 走波
「夏時雨」は、なかなかお目にかからない季語。「さやさや」の擬態語と共に、「夏時雨」が気持ちのよい涼しさを上手く引き出している。
○ががんぼの揺らぎや白昼の画廊 中中
「ががんぼ」と「画廊」の取合せがユニーク。中七から下五に掛けてのぎこちない破調感が、かえって効果的で「ががんぼ」らしさが出ている。
○侍の映画を観たり夏の昼 厚子
子供の頃、夜の町内の広場でチャンバラ映画を観た記憶があるが、時代が変わり、今は冷房の効いた室内で鑑賞を楽しんでいる。侍映画の痛快さが夏に似合う。
○夏休み螺子巻く祖父の古時計 えこ
「古時計」が今も動いているのが素晴らしい。お祖父さんの時代の柱時計か、愛用の腕時計か、どちらでも想像出来る。
○六本の胡瓜をならべ定規置く 茂樹
家庭菜園で、今年一番の収穫となったので、定規と共に写真を撮った。
*次回予定
日時 八月六日(日)十八時~二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「原爆忌」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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今朝の中国新聞の記事に四國五郎さんと息子の光さんのことが出ています。
小さな手帳に書かれたシベリアでの日記など、私も何度も観に行きました。

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