六月の句会 兼題 『蛍』
2023年06月18日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第百五号(令和五年六月)
今年は、早々に梅雨入りしたが、句会当日は雨も降らずに穏やかな天気となった。中村啓太郎さんの個展『トリが飛ぶ前に』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の七名を含めて十六名となった。(尚、今回愛幸さんの選句はありません)

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「蛍」
本家へと導いてゆく蛍道 茂樹
どくだみと同じあじするほうほたる 麦
弧を描く群青のよの蛍かな 風外
◎誰となく無言になりて初蛍 たつみ
○声あげて吾子のはじめて見る蛍 えこ
畦道に淋しい蛍吾に付く 厚子
手の平に乗せし蛍の点滅す 走波
コンビニの栄枯盛衰蛍とぶ 朋子
父母とみしいつかの津和野の蛍かな 六星
沢沿ひに二筋三筋蛍かな 進
螢火よ遠い過去への鎮魂歌 愛幸
道の辺に蛍がひとつ灯りをり ねむ女
待っとるで川整えて蛍(ほたる)舞(まい) 彩鳥
少女笑み蛍潰せし掌(て)を洗ふ 斑猫
川底を今は昔と舞う蛍 軽太郎(旧啓太郎)
ほうたるにこちら雌なりペンライト 七軒
当季雑詠
雨蛙日向日影の境目に 茂樹
緑蔭へ集まつてゐる運転手 茂樹
◎所在無き雨降る夜の扇風機 麦
扇風機首も振らせぬ宇宙人 麦
ふる池やとりのこされし水(みず)馬(すまし) 風外
まる見えの足袋のよごれや更衣 風外
蟻の道曲がり曲がって奥津城へ たつみ
画用紙に描きし虹の絵失せにけり たつみ
◎留守庭の番人となり女郎蜘蛛 えこ
蛞蝓の縦横無尽なる跡の えこ

まじ吹きて大の字に伸ぶ帰郷かな 厚子
傷ありき枇杷の実五つもらひけり 厚子
犬と行く庭石菖(にわぜきしょう)の咲く広場 走波

遮断機にさへぎられたる夏の海 走波
北陸の田植ゑ終りて空近し 朋子
夏の星ジンベイザメの背にもあり 朋子
白雨落つ小径の小さき花揺らし 六星
甘酸つぱい君の届けし甘夏は 六星
社の樹二声鳴くや青葉木菟 進
夜の闇声が横切る時鳥 進
露あふるドクダミの園満ち満ちる 愛幸
光だす梅雨の晴れ間の艶き緑(りょく) 愛幸
泰山木の花の白く傷つきやすく ねむ女
星なき夜地上に万の螢かな ねむ女
新聞はグラジオラスの通学服 彩鳥
梅雨景色町家通りの最骨頂 彩鳥
首狩りの挽歌響ける熱帯夜 斑猫
〇積乱雲風の胎児を孕み湧く 斑猫
物干しと湿った風とアロハシャツ 軽太郎(旧啓太郎)
快晴と真っ黒い影作り雨 軽太郎(旧啓太郎)
風は今螢袋の白の色 七軒
サイパンの伯父腐葉土に時鳥 七軒
(句会寸描)
*兼題の「蛍」は、接戦の末、たつみさんが一位となった。雑詠は、麦さんとえこさんが一位を分け合った。兼題は、最近ではめったに見ることのない蛍に悪戦苦闘されたようだ。雑詠は、季語に偏りがなくバラエティーに富んでいた。
*兼題「蛍」
◎誰となく無言になりて初蛍 たつみ
賑やかな花火と違って「蛍」を観に行くと、大概こんな感じになる。みんな息をひそめ、辺りを注意深く見まわして「初蛍」を探している様子が伝わってくる。
○声あげて吾子のはじめて見る蛍 えこ
私も幼い頃、同じように声を上げていたに違いない。それぐらい「蛍」が放つ光には、感動するものがある。初めて蛍を見た子供への、やさしい眼差しに溢れている。
*当季雑詠
◎所在無き雨降る夜の扇風機 麦
扇風機を出してみたものの、雨が降り、肌寒く、今晩は出番がない。扇風機が感情を持っているように、描写しているのが面白い。
◎留守庭の番人となり女郎蜘蛛 えこ
普段は厄介者の「女郎蜘蛛」であるが、留守中の庭の「番人」として、家を守ってくれるありがたい存在のように思えた。
〇積乱雲風の胎児を孕み湧く 斑猫
「雲の峰」でもなく、「入道雲」でもなく、「積乱雲」がよく効いている。中七の「風の胎児を」の措辞も一雨きそうな不安感を煽っている。
*次回予定
日時 七月二日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「虫偏の字を入れた夏の句」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 七月一日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 七月二日(日)
選句締切 七月五日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
今年は、早々に梅雨入りしたが、句会当日は雨も降らずに穏やかな天気となった。中村啓太郎さんの個展『トリが飛ぶ前に』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の七名を含めて十六名となった。(尚、今回愛幸さんの選句はありません)

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「蛍」
本家へと導いてゆく蛍道 茂樹
どくだみと同じあじするほうほたる 麦
弧を描く群青のよの蛍かな 風外
◎誰となく無言になりて初蛍 たつみ
○声あげて吾子のはじめて見る蛍 えこ
畦道に淋しい蛍吾に付く 厚子
手の平に乗せし蛍の点滅す 走波
コンビニの栄枯盛衰蛍とぶ 朋子
父母とみしいつかの津和野の蛍かな 六星
沢沿ひに二筋三筋蛍かな 進
螢火よ遠い過去への鎮魂歌 愛幸
道の辺に蛍がひとつ灯りをり ねむ女
待っとるで川整えて蛍(ほたる)舞(まい) 彩鳥
少女笑み蛍潰せし掌(て)を洗ふ 斑猫
川底を今は昔と舞う蛍 軽太郎(旧啓太郎)
ほうたるにこちら雌なりペンライト 七軒
当季雑詠
雨蛙日向日影の境目に 茂樹
緑蔭へ集まつてゐる運転手 茂樹
◎所在無き雨降る夜の扇風機 麦
扇風機首も振らせぬ宇宙人 麦
ふる池やとりのこされし水(みず)馬(すまし) 風外
まる見えの足袋のよごれや更衣 風外
蟻の道曲がり曲がって奥津城へ たつみ
画用紙に描きし虹の絵失せにけり たつみ
◎留守庭の番人となり女郎蜘蛛 えこ
蛞蝓の縦横無尽なる跡の えこ

まじ吹きて大の字に伸ぶ帰郷かな 厚子
傷ありき枇杷の実五つもらひけり 厚子
犬と行く庭石菖(にわぜきしょう)の咲く広場 走波

遮断機にさへぎられたる夏の海 走波
北陸の田植ゑ終りて空近し 朋子
夏の星ジンベイザメの背にもあり 朋子
白雨落つ小径の小さき花揺らし 六星
甘酸つぱい君の届けし甘夏は 六星
社の樹二声鳴くや青葉木菟 進
夜の闇声が横切る時鳥 進
露あふるドクダミの園満ち満ちる 愛幸
光だす梅雨の晴れ間の艶き緑(りょく) 愛幸
泰山木の花の白く傷つきやすく ねむ女
星なき夜地上に万の螢かな ねむ女
新聞はグラジオラスの通学服 彩鳥
梅雨景色町家通りの最骨頂 彩鳥
首狩りの挽歌響ける熱帯夜 斑猫
〇積乱雲風の胎児を孕み湧く 斑猫
物干しと湿った風とアロハシャツ 軽太郎(旧啓太郎)
快晴と真っ黒い影作り雨 軽太郎(旧啓太郎)
風は今螢袋の白の色 七軒
サイパンの伯父腐葉土に時鳥 七軒
(句会寸描)
*兼題の「蛍」は、接戦の末、たつみさんが一位となった。雑詠は、麦さんとえこさんが一位を分け合った。兼題は、最近ではめったに見ることのない蛍に悪戦苦闘されたようだ。雑詠は、季語に偏りがなくバラエティーに富んでいた。
*兼題「蛍」
◎誰となく無言になりて初蛍 たつみ
賑やかな花火と違って「蛍」を観に行くと、大概こんな感じになる。みんな息をひそめ、辺りを注意深く見まわして「初蛍」を探している様子が伝わってくる。
○声あげて吾子のはじめて見る蛍 えこ
私も幼い頃、同じように声を上げていたに違いない。それぐらい「蛍」が放つ光には、感動するものがある。初めて蛍を見た子供への、やさしい眼差しに溢れている。
*当季雑詠
◎所在無き雨降る夜の扇風機 麦
扇風機を出してみたものの、雨が降り、肌寒く、今晩は出番がない。扇風機が感情を持っているように、描写しているのが面白い。
◎留守庭の番人となり女郎蜘蛛 えこ
普段は厄介者の「女郎蜘蛛」であるが、留守中の庭の「番人」として、家を守ってくれるありがたい存在のように思えた。
〇積乱雲風の胎児を孕み湧く 斑猫
「雲の峰」でもなく、「入道雲」でもなく、「積乱雲」がよく効いている。中七の「風の胎児を」の措辞も一雨きそうな不安感を煽っている。
*次回予定
日時 七月二日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「虫偏の字を入れた夏の句」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 七月一日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 七月二日(日)
選句締切 七月五日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
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