五月の句会 兼題「虹」
2023年05月17日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第百四号(令和五年五月)
立夏を過ぎたとたんに、生憎の雨模様となった。立町ツバメさんの個展『わたしのほしぞら』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の四名を含めて十三名となった。(尚、今回ねむ女さんの選句はありません)

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「虹」
○船に添ひ海走る虹龍の如し 彩鳥
正面の社へ二重虹立ちぬ 茂樹
○昼下がり虹の欠片の忘れ物 六星
虹架かる自転車停めて見惚れたり 走波
◎飛行艇虹より出て飛び立ちぬ 斑猫
雨もよひチタンの一輪挿しに虹 ねむ女
○それぞれに見た虹のこと話す夕 たつみ
◎虹の根や確か棚田の三枚目 麦
曇天のドライブ眼前に虹立つ えこ
虹高し側に我が犬手には傘 進
ルーキーを寿ぐ虹や初勝利 朋子
○あふために虹に向つてバスに乗る 七軒
虹がでた雨のち晴の一瞬に 風外

当季雑詠
季語眺めはたと菖蒲湯思い出す 彩鳥
薫風の奏でる葉音に息をつく 彩鳥
◎天空を引き寄せてゐる桐の花 茂樹
植栽へ細やかに張る蜘蛛の糸 茂樹
さかあがり四回できた夏(なつ)初月(はづき) 六星

新緑を映し流るる太田川 六星
バスに乗る盲導犬よ梅雨間近 走波
○さみだるる終着駅の車止め 走波
座頭虫揺らす葉影やジギタリス 斑猫
沈黙の寺院を叩き驟雨過ぐ 斑猫
磯遊び木星柄の石拾ふ ねむ女
○虹の根を掘れば宝のあるといふ ねむ女
名を母に聞きし記憶の紫蘭かな たつみ

夏めくやサラダ彩る食用花 たつみ
母の日に妣の字知りて逢ひに行く 麦
残り香や振り向きざまに五月闇 麦
上着手に麦の秋風鳥の声 えこ
ビル一階に保育園あり鯉のぼり えこ
男の子名前の入りし幟かな 進
そっと咲く父が残した花水木 進
限定のランチに添えてカーネーション 朋子
登山靴やつと洗ひて風薫る 朋子
雨ならば雨浴ぶるなり松の芯 七軒
薫風に飽きることなしすべり台 七軒
メダカの子5ミリの命いとおしい 風外
あじさいがキャビアの粒咲くを待つ 風外
(句会寸描)
*兼題の「虹」は、大接戦の末、斑猫さんと麦さんが一位を分け合った。雑詠は、茂樹が一位となった。兼題は、虹を見ることが少なくなってきたので、想像力を働かせた句が数多く見受けられた。雑詠は、初夏の様子をいろいろな視点で捉えていた。
*兼題 「虹」
◎飛行艇虹より出て飛び立ちぬ 斑猫
普段は滅多にお目にかかれない「飛行艇」であるが、「虹」との取合せに物語性を感じる。ジェット機ではなく「飛行艇」というところにロマンがある。
◎虹の根や確か棚田の三枚目 麦
虹そのものではなく、虹の根元を観察しているところが面白い。
「確か」と示しているのでもう消えているのかもしれない。下五の「三枚目」は、リズムがよい。
○船に添ひ海走る虹龍の如し 彩鳥
昇り龍であろうか。中七の「海走る虹」が勢いを感じさせ効果を上げている。「虹」を「龍」と感じるところに作者の感性が出ている。
○昼下がり虹の欠片の忘れ物 六星
昼間の通り雨か何かと思われる。中七から下五にかけての「虹の欠片の忘れ物」が独特でユーモラスである。「虹」の名残りを見つけた嬉しさも感じる。
○それぞれに見た虹のこと話す夕 たつみ
その日の「虹」が、家族の共通の話題となっている。一家団欒の楽しい夕餉の様子がうかがわれ、会話もいつも以上に弾んでいるものと思われる。
○あふために虹に向つてバスに乗る 七軒
どこかの映画のワンシーンを思わせる。「あふために」としかいってないので、誰に、どこで、何のために会うのか、たいへんロマンチックな句。
*当季雑詠
◎天空を引き寄せてゐる桐の花 茂樹
桐の花は、非常に背丈の高い花である。毎年のように近所の同じ場所で、見上げているが、その日は何となくそんな感じがした。
○さみだるる終着駅の車止め 走波
「終着駅の車止め」にスポットライトを当てている。そこには雑踏から遠ざかった佇まいが感じられ、いかにも五月雨らしい一風景である。
photo by 麦
○虹の根を掘れば宝のあるといふ ねむ女
アイルランドの民話にこういう言い伝えがあるとのこと。作者はそれを知っていて、実際の虹を眺めながら夢のある思いを寄せている。
*次回予定
日時 六月四日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「蛍」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 六月三日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 六月四日(日)
選句締切 六月七日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
立夏を過ぎたとたんに、生憎の雨模様となった。立町ツバメさんの個展『わたしのほしぞら』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の四名を含めて十三名となった。(尚、今回ねむ女さんの選句はありません)

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「虹」
○船に添ひ海走る虹龍の如し 彩鳥
正面の社へ二重虹立ちぬ 茂樹
○昼下がり虹の欠片の忘れ物 六星
虹架かる自転車停めて見惚れたり 走波
◎飛行艇虹より出て飛び立ちぬ 斑猫
雨もよひチタンの一輪挿しに虹 ねむ女
○それぞれに見た虹のこと話す夕 たつみ
◎虹の根や確か棚田の三枚目 麦
曇天のドライブ眼前に虹立つ えこ
虹高し側に我が犬手には傘 進
ルーキーを寿ぐ虹や初勝利 朋子
○あふために虹に向つてバスに乗る 七軒
虹がでた雨のち晴の一瞬に 風外

当季雑詠
季語眺めはたと菖蒲湯思い出す 彩鳥
薫風の奏でる葉音に息をつく 彩鳥
◎天空を引き寄せてゐる桐の花 茂樹
植栽へ細やかに張る蜘蛛の糸 茂樹
さかあがり四回できた夏(なつ)初月(はづき) 六星

新緑を映し流るる太田川 六星
バスに乗る盲導犬よ梅雨間近 走波
○さみだるる終着駅の車止め 走波
座頭虫揺らす葉影やジギタリス 斑猫
沈黙の寺院を叩き驟雨過ぐ 斑猫
磯遊び木星柄の石拾ふ ねむ女
○虹の根を掘れば宝のあるといふ ねむ女
名を母に聞きし記憶の紫蘭かな たつみ

夏めくやサラダ彩る食用花 たつみ
母の日に妣の字知りて逢ひに行く 麦
残り香や振り向きざまに五月闇 麦
上着手に麦の秋風鳥の声 えこ
ビル一階に保育園あり鯉のぼり えこ
男の子名前の入りし幟かな 進
そっと咲く父が残した花水木 進
限定のランチに添えてカーネーション 朋子
登山靴やつと洗ひて風薫る 朋子
雨ならば雨浴ぶるなり松の芯 七軒
薫風に飽きることなしすべり台 七軒
メダカの子5ミリの命いとおしい 風外
あじさいがキャビアの粒咲くを待つ 風外
(句会寸描)
*兼題の「虹」は、大接戦の末、斑猫さんと麦さんが一位を分け合った。雑詠は、茂樹が一位となった。兼題は、虹を見ることが少なくなってきたので、想像力を働かせた句が数多く見受けられた。雑詠は、初夏の様子をいろいろな視点で捉えていた。
*兼題 「虹」
◎飛行艇虹より出て飛び立ちぬ 斑猫
普段は滅多にお目にかかれない「飛行艇」であるが、「虹」との取合せに物語性を感じる。ジェット機ではなく「飛行艇」というところにロマンがある。
◎虹の根や確か棚田の三枚目 麦
虹そのものではなく、虹の根元を観察しているところが面白い。
「確か」と示しているのでもう消えているのかもしれない。下五の「三枚目」は、リズムがよい。
○船に添ひ海走る虹龍の如し 彩鳥
昇り龍であろうか。中七の「海走る虹」が勢いを感じさせ効果を上げている。「虹」を「龍」と感じるところに作者の感性が出ている。
○昼下がり虹の欠片の忘れ物 六星
昼間の通り雨か何かと思われる。中七から下五にかけての「虹の欠片の忘れ物」が独特でユーモラスである。「虹」の名残りを見つけた嬉しさも感じる。
○それぞれに見た虹のこと話す夕 たつみ
その日の「虹」が、家族の共通の話題となっている。一家団欒の楽しい夕餉の様子がうかがわれ、会話もいつも以上に弾んでいるものと思われる。
○あふために虹に向つてバスに乗る 七軒
どこかの映画のワンシーンを思わせる。「あふために」としかいってないので、誰に、どこで、何のために会うのか、たいへんロマンチックな句。
*当季雑詠
◎天空を引き寄せてゐる桐の花 茂樹
桐の花は、非常に背丈の高い花である。毎年のように近所の同じ場所で、見上げているが、その日は何となくそんな感じがした。
○さみだるる終着駅の車止め 走波
「終着駅の車止め」にスポットライトを当てている。そこには雑踏から遠ざかった佇まいが感じられ、いかにも五月雨らしい一風景である。

○虹の根を掘れば宝のあるといふ ねむ女
アイルランドの民話にこういう言い伝えがあるとのこと。作者はそれを知っていて、実際の虹を眺めながら夢のある思いを寄せている。
*次回予定
日時 六月四日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「蛍」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 六月三日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 六月四日(日)
選句締切 六月七日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
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