十月の句会は、数!
2022年10月11日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報 第九十七号(令和四年十月)
朝晩は涼しく、昼は暑い毎日が続いている。「あべゆうりさん個展」の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の六名を含めて十二名となった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「数一切」
○あさがほや朝一番の蒼き花 六星
◎秋は空織りなす雲の八百万 麦
○避けて来た蕪村一冊秋の宵 走波
○秋高し流れる雲の二三片 進
○三日月のことに明るき夕べかな ねむ女
○籤を買ふ秋の一粒万倍日 茂樹
○風呂の湯は三十九℃に九月尽 厚子
数百羽帰るツバメの旅支度 風外
◎ひとすじの光がさして曼珠沙華 愛幸
三つ四つと爪紅の花数へたり たつみ
欄干に一枝の萩謎めきて 朋子
◎一の目をただ出す遊びする夜長 えこ
当季雑詠
梨林檎栗も貰ひて夕焼けあり 六星
うろこ雲とほく遠くに行きにけり 六星
蟷螂やこくびかしげて向き変へて 麦
過ぎたこと悔いは花野にすてちまえ 麦
○冬瓜のゴロリと並ぶ無人市 走波
河原にてフルートの音や冬近し 走波
団栗を拾うてうれし三つ四つ 進
こんな夜は一人静かに温め酒 進
古き家に銀木犀の大樹かな ねむ女
○放物線描き柘榴の成り下がる ねむ女
浮き沈むひらりはらりと秋の蝶 茂樹
◎木犀や長くなりたる立ち話 茂樹
ラジオから「ご自愛ください」秋の昼 厚子
蟷螂(かまきり)を捕つて新たな恐怖かな 厚子
Uターンキンモクセイの酔う香 風外
朝寒し毛皮を引けば足も出づ 風外
乱れ菊ハランと生けし白き壺 愛幸
◎消えかけた医院の文字に蔦からむ 愛幸
へぎ折の隅に嬉しや青蜜柑 たつみ
◎触れし手の細胞熱き月明り たつみ
みちのくや熊の爪痕残るブナ(文字化けのため、漢字を片仮名表記) 朋子
すすき野に売地の看板傾きて 朋子
服に付くヌスビトハギの実ざらり秋 えこ

赤とんぼ老犬店の前で待つ えこ
(句会寸描)
*兼題の「数一切」は、大激戦の末、麦さん、愛幸さん、えこさんが一位を分け合った。雑詠も激戦の末、茂樹、愛幸さん、たつみさんが一位となった。兼題は、たいへんバラエティーに富んでいて、選句もかなり分散した。雑詠は、どの句も秋らしい特徴を個性的に上手く捉えていた。
*兼題 「数一切」
◎秋は空織りなす雲の八百万 麦
秋は、雲の種類が豊富であるが、それを「八百万」としたところが、ユニークである。様々な秋の雲で描かれた青空を思い浮かべることができる。
◎ひとすじの光がさして曼珠沙華 愛幸
「曼珠沙華」の畔に群生している様子も実に美しいが、ここではスポットライトのような光に照らされた印象的な場面を素直に表現している。
◎一の目をただ出す遊びする夜長 えこ
単純な遊びであるが、その「一の目」はなかなか出てこない。秋の夜長にぴったりな遊びである。
○あさがほや朝一番の蒼き花 六星
早朝の散歩などで目に入ったのであろうか。人によって好みはいろいろあるが、「あさがほ」の「蒼」は特にすがすがしさを感じる。
○避けて来た蕪村一冊秋の宵 走波
苦手な「蕪村」を読まれた、その後の感想も興味深い。
○秋高し流れる雲の二三片 進
台風一過の澄んだ秋空のような気がする。中七から下五にかけての「雲の二三片」がいかにも秋らしい。
○三日月のことに明るき夕べかな ねむ女
「三日月」を明るく捉えたところが素晴らしい。晴れわたっていた「夕べ」に輝いてたものと思われる。
○籤を買ふ秋の一粒万倍日 茂樹
宝くじ売り場に、「一粒万倍日」のチラシが掲げられていたので欲が出て思わず買ってしまった。
○風呂の湯は三十九℃に九月尽 厚子
暑い時期は、このように少し低めに「風呂」の温度を設定している家が多いようだ。中七の「三十九℃に」の「℃」がユニーク。
*当季雑詠
◎木犀や長くなりたる立ち話 茂樹
近所の浄水場内の「金木犀」のよい香りをしばらく楽しんでいたら、ふとこのような景が思い浮かんだ。
◎消えかけた医院の文字に蔦からむ 愛幸
もう閉院したのであろうか。それともまだ現役の歴史のある医院であろうか。いろいろと想像できて、「消えかけた医院の文字」がよく秋と調和している。
◎触れし手の細胞熱き月明り たつみ
この句もいろいろと想像をかきたてる。中七の「細胞熱き」という表現が面白い。
○冬瓜のゴロリと並ぶ無人市 走波
「冬瓜」が無造作に売られているのが、いかにも「無人市」らしい。中七の「ゴロリと並ぶ」もよく効いている。

○放物線描き柘榴の成り下がる ねむ女
実のぎっしり詰まった「柘榴」の重さで枝がたわんでいる様子が目に浮かぶ。
*次回予定
日時 十一月六日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「冬の字を入れた冬の季語」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 十一月五日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 十一月六日(日)
選句締切 十一月九日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
朝晩は涼しく、昼は暑い毎日が続いている。「あべゆうりさん個展」の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の六名を含めて十二名となった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「数一切」
○あさがほや朝一番の蒼き花 六星
◎秋は空織りなす雲の八百万 麦
○避けて来た蕪村一冊秋の宵 走波
○秋高し流れる雲の二三片 進
○三日月のことに明るき夕べかな ねむ女
○籤を買ふ秋の一粒万倍日 茂樹
○風呂の湯は三十九℃に九月尽 厚子
数百羽帰るツバメの旅支度 風外
◎ひとすじの光がさして曼珠沙華 愛幸
三つ四つと爪紅の花数へたり たつみ
欄干に一枝の萩謎めきて 朋子
◎一の目をただ出す遊びする夜長 えこ
当季雑詠
梨林檎栗も貰ひて夕焼けあり 六星
うろこ雲とほく遠くに行きにけり 六星
蟷螂やこくびかしげて向き変へて 麦
過ぎたこと悔いは花野にすてちまえ 麦
○冬瓜のゴロリと並ぶ無人市 走波
河原にてフルートの音や冬近し 走波
団栗を拾うてうれし三つ四つ 進
こんな夜は一人静かに温め酒 進
古き家に銀木犀の大樹かな ねむ女
○放物線描き柘榴の成り下がる ねむ女
浮き沈むひらりはらりと秋の蝶 茂樹
◎木犀や長くなりたる立ち話 茂樹
ラジオから「ご自愛ください」秋の昼 厚子
蟷螂(かまきり)を捕つて新たな恐怖かな 厚子
Uターンキンモクセイの酔う香 風外
朝寒し毛皮を引けば足も出づ 風外
乱れ菊ハランと生けし白き壺 愛幸
◎消えかけた医院の文字に蔦からむ 愛幸
へぎ折の隅に嬉しや青蜜柑 たつみ
◎触れし手の細胞熱き月明り たつみ
みちのくや熊の爪痕残るブナ(文字化けのため、漢字を片仮名表記) 朋子
すすき野に売地の看板傾きて 朋子
服に付くヌスビトハギの実ざらり秋 えこ

赤とんぼ老犬店の前で待つ えこ
(句会寸描)
*兼題の「数一切」は、大激戦の末、麦さん、愛幸さん、えこさんが一位を分け合った。雑詠も激戦の末、茂樹、愛幸さん、たつみさんが一位となった。兼題は、たいへんバラエティーに富んでいて、選句もかなり分散した。雑詠は、どの句も秋らしい特徴を個性的に上手く捉えていた。
*兼題 「数一切」
◎秋は空織りなす雲の八百万 麦
秋は、雲の種類が豊富であるが、それを「八百万」としたところが、ユニークである。様々な秋の雲で描かれた青空を思い浮かべることができる。
◎ひとすじの光がさして曼珠沙華 愛幸
「曼珠沙華」の畔に群生している様子も実に美しいが、ここではスポットライトのような光に照らされた印象的な場面を素直に表現している。
◎一の目をただ出す遊びする夜長 えこ
単純な遊びであるが、その「一の目」はなかなか出てこない。秋の夜長にぴったりな遊びである。
○あさがほや朝一番の蒼き花 六星
早朝の散歩などで目に入ったのであろうか。人によって好みはいろいろあるが、「あさがほ」の「蒼」は特にすがすがしさを感じる。
○避けて来た蕪村一冊秋の宵 走波
苦手な「蕪村」を読まれた、その後の感想も興味深い。
○秋高し流れる雲の二三片 進
台風一過の澄んだ秋空のような気がする。中七から下五にかけての「雲の二三片」がいかにも秋らしい。
○三日月のことに明るき夕べかな ねむ女
「三日月」を明るく捉えたところが素晴らしい。晴れわたっていた「夕べ」に輝いてたものと思われる。
○籤を買ふ秋の一粒万倍日 茂樹
宝くじ売り場に、「一粒万倍日」のチラシが掲げられていたので欲が出て思わず買ってしまった。
○風呂の湯は三十九℃に九月尽 厚子
暑い時期は、このように少し低めに「風呂」の温度を設定している家が多いようだ。中七の「三十九℃に」の「℃」がユニーク。
*当季雑詠
◎木犀や長くなりたる立ち話 茂樹
近所の浄水場内の「金木犀」のよい香りをしばらく楽しんでいたら、ふとこのような景が思い浮かんだ。
◎消えかけた医院の文字に蔦からむ 愛幸
もう閉院したのであろうか。それともまだ現役の歴史のある医院であろうか。いろいろと想像できて、「消えかけた医院の文字」がよく秋と調和している。
◎触れし手の細胞熱き月明り たつみ
この句もいろいろと想像をかきたてる。中七の「細胞熱き」という表現が面白い。
○冬瓜のゴロリと並ぶ無人市 走波
「冬瓜」が無造作に売られているのが、いかにも「無人市」らしい。中七の「ゴロリと並ぶ」もよく効いている。

○放物線描き柘榴の成り下がる ねむ女
実のぎっしり詰まった「柘榴」の重さで枝がたわんでいる様子が目に浮かぶ。
*次回予定
日時 十一月六日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「冬の字を入れた冬の季語」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 十一月五日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 十一月六日(日)
選句締切 十一月九日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
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