九月の俳句会 兼題「風一切」
2021年09月11日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第八十四号(令和三年九月)
今回も緊急事態宣言中ではあったが、密を出来るだけ避けて、先月同様に少人数の句会となった。中垣満さんの絵画・版画展の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の五名を含めて十名となった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「風一切」
○秋暁の信濃の山に風の吠ゆ ねむ女
◎秋の風アキレス腱のしなやかさ えこ
秋の夜の寝れぬ夜はリズム風 風外
窓をあけ風を集めて秋のドライブ マルマチ
黄昏るる岬に秋の風立ちぬ 茂樹
透明は稚児の眼台風の目はブルー 中中
○朝方の風変わる頃草を焼く たつみ
鳩見つめ色なき風の身に沁みる 厚子
風吹いてふと気がつくと九月 六星
◎谷深し風にざわめく蕎麦の花 進

当季雑詠
○キンカンの古き小壜や今朝の秋 ねむ女
◎新涼や行く当ての無き旅かばん ねむ女
逡巡す音の洪水秋出水 えこ
鰯雲コンビニに水買いに行(ゆ)く えこ
いつのまにハギの花咲く庭の隅 風外

夜中中鈴虫の声絵にせねば 風外
空高くもたげる頭ふと上がり マルマチ
毎朝の散歩道中落つ青柿 マルマチ
空耳のやうに鈴虫奏でをり 茂樹
小鳥来るシフォンケーキの手を休め 茂樹
塵(ちり)籠(かご)に風を集める人の秋 中中
朝の教室夜学子の忘れ物 中中
○売り出しの品を取り込む稲光 たつみ
○梨をむく落ちる螺旋の表裏 たつみ
秋麗や行(ゆ)け行(ゆ)けブルーインパルス 厚子
○菊日和口開けて待つ診療台 厚子
◎月見豆つるりと飛んで宙(そら)へ行く 六星
秋の蚊は脛に無音で忍びより 六星
亡き兄を俳句でしのぶ獺祭忌 進
いわし雲見上ぐる喉の渇きかな 進
(句会寸描)
*兼題の「風一切」は、接戦の末、えこさんと進さんが一位を分け合った。雑詠も接戦となり、ねむ女さんと六星さんが一位となった。兼題は、単純に「秋風」とはせずにそれぞれ工夫されていた。雑詠は、初秋らしい爽やかな句が多かった。
*兼題「風一切」
◎秋の風アキレス腱のしなやかさ えこ
「アキレス腱」はとかくマイナスイメージに捉えられがちであるが、ここでは明るくプラスイメージにしているところが、よく工夫されている。上五を「秋風や」と切れ字にしなかったことも雰囲気が和らいで成功している。
◎谷深し風にざわめく蕎麦の花 進
白い「蕎麦の花」の清々しさが伝わってきて、心が洗われるような句になっている。谷間のどことなく鄙びた雰囲気も感じられる。
○秋暁の信濃の山に風の吠ゆ ねむ女
下五の「風の吠ゆ」に、しばらくすれば来るであろう信州の冬の厳しさを垣間見ることができる。暮らす人々の引き締まった顔も想像できる。
○朝方の風変わる頃草を焼く たつみ
草焼きの特徴を過不足なく端的に捉えている。ただ「草を焼く」は春の季語なので今の時季でなかったのが惜しまれる。
*当季雑詠
◎新涼や行く当ての無き旅かばん ねむ女
本来は行く当てのある「旅かばん」であるが、コロナ禍の厳しい現実をありのままに語っている。「新涼や」は、ここでは哀愁のある響きになっている。
◎月見豆つるりと飛んで宙(そら)へ行く 六星
「枝豆」を「月見豆」にしたのがお手柄である。ユーモラスで広がりのある句になっている。
○キンカンの古き小壜や今朝の秋 ねむ女

「キンカン塗ってまた塗って・・・」の昭和のコマーシャルを思い出す。レトロな小壜と秋の雰囲気がマッチしている。
○売り出しの品を取り込む稲光 たつみ
「稲光」の状況を上手く活写して臨場感が出ている。「売り出しの品」が何であるかが話題になったが、作者によると古本を取り込まれたそうだ。
○梨をむく落ちる螺旋(らせん)の表裏 たつみ
何気ない日常の一コマをうまく観察されている。下五の「螺旋(らせん)の表裏」の「表裏」をよく使う「裏表」にしなかったところに工夫の跡が見受けられる。
○菊日和口開けて待つ診療台 厚子
歯医者さんと思われるが、ゆったりとしたおだやかな時間を感じさせる。
*次回予定
日時 十月三日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「茸一切」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 十月二日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 十月三日(日)
選句締切 十月六日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
今回も緊急事態宣言中ではあったが、密を出来るだけ避けて、先月同様に少人数の句会となった。中垣満さんの絵画・版画展の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、欠席投句の五名を含めて十名となった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「風一切」
○秋暁の信濃の山に風の吠ゆ ねむ女
◎秋の風アキレス腱のしなやかさ えこ
秋の夜の寝れぬ夜はリズム風 風外
窓をあけ風を集めて秋のドライブ マルマチ
黄昏るる岬に秋の風立ちぬ 茂樹
透明は稚児の眼台風の目はブルー 中中
○朝方の風変わる頃草を焼く たつみ
鳩見つめ色なき風の身に沁みる 厚子
風吹いてふと気がつくと九月 六星
◎谷深し風にざわめく蕎麦の花 進

当季雑詠
○キンカンの古き小壜や今朝の秋 ねむ女
◎新涼や行く当ての無き旅かばん ねむ女
逡巡す音の洪水秋出水 えこ
鰯雲コンビニに水買いに行(ゆ)く えこ
いつのまにハギの花咲く庭の隅 風外

夜中中鈴虫の声絵にせねば 風外
空高くもたげる頭ふと上がり マルマチ
毎朝の散歩道中落つ青柿 マルマチ
空耳のやうに鈴虫奏でをり 茂樹
小鳥来るシフォンケーキの手を休め 茂樹
塵(ちり)籠(かご)に風を集める人の秋 中中
朝の教室夜学子の忘れ物 中中
○売り出しの品を取り込む稲光 たつみ
○梨をむく落ちる螺旋の表裏 たつみ
秋麗や行(ゆ)け行(ゆ)けブルーインパルス 厚子
○菊日和口開けて待つ診療台 厚子
◎月見豆つるりと飛んで宙(そら)へ行く 六星
秋の蚊は脛に無音で忍びより 六星
亡き兄を俳句でしのぶ獺祭忌 進
いわし雲見上ぐる喉の渇きかな 進
(句会寸描)
*兼題の「風一切」は、接戦の末、えこさんと進さんが一位を分け合った。雑詠も接戦となり、ねむ女さんと六星さんが一位となった。兼題は、単純に「秋風」とはせずにそれぞれ工夫されていた。雑詠は、初秋らしい爽やかな句が多かった。
*兼題「風一切」
◎秋の風アキレス腱のしなやかさ えこ
「アキレス腱」はとかくマイナスイメージに捉えられがちであるが、ここでは明るくプラスイメージにしているところが、よく工夫されている。上五を「秋風や」と切れ字にしなかったことも雰囲気が和らいで成功している。
◎谷深し風にざわめく蕎麦の花 進
白い「蕎麦の花」の清々しさが伝わってきて、心が洗われるような句になっている。谷間のどことなく鄙びた雰囲気も感じられる。
○秋暁の信濃の山に風の吠ゆ ねむ女
下五の「風の吠ゆ」に、しばらくすれば来るであろう信州の冬の厳しさを垣間見ることができる。暮らす人々の引き締まった顔も想像できる。
○朝方の風変わる頃草を焼く たつみ
草焼きの特徴を過不足なく端的に捉えている。ただ「草を焼く」は春の季語なので今の時季でなかったのが惜しまれる。
*当季雑詠
◎新涼や行く当ての無き旅かばん ねむ女
本来は行く当てのある「旅かばん」であるが、コロナ禍の厳しい現実をありのままに語っている。「新涼や」は、ここでは哀愁のある響きになっている。
◎月見豆つるりと飛んで宙(そら)へ行く 六星
「枝豆」を「月見豆」にしたのがお手柄である。ユーモラスで広がりのある句になっている。
○キンカンの古き小壜や今朝の秋 ねむ女

「キンカン塗ってまた塗って・・・」の昭和のコマーシャルを思い出す。レトロな小壜と秋の雰囲気がマッチしている。
○売り出しの品を取り込む稲光 たつみ
「稲光」の状況を上手く活写して臨場感が出ている。「売り出しの品」が何であるかが話題になったが、作者によると古本を取り込まれたそうだ。
○梨をむく落ちる螺旋(らせん)の表裏 たつみ
何気ない日常の一コマをうまく観察されている。下五の「螺旋(らせん)の表裏」の「表裏」をよく使う「裏表」にしなかったところに工夫の跡が見受けられる。
○菊日和口開けて待つ診療台 厚子
歯医者さんと思われるが、ゆったりとしたおだやかな時間を感じさせる。
*次回予定
日時 十月三日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「茸一切」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 十月二日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 十月三日(日)
選句締切 十月六日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
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