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『なにもないへや』 新庄恵依

2021年03月21日
今は無い部屋のことを言葉で新庄さんに説明すると、彼女が身体でその部屋を再現してくれる。


私は、二十歳前後に祖母の家の離れの二階に間借りしていた。
ドアを開けて急な階段を上がると手すりがあり、窓の傍には本棚、そこには虫が食ったような古い本があった。狭い部屋には床の間があってその奥の小さな部屋にベッドがあり、壁や天井には土門拳の仏像のモノクロ写真やルドンの首の絵が貼ってあった。
床には油絵の道具が散らばっていた。


新庄さんは丁寧にゆっくりと階段を上がっていき本棚から一冊の古い本を取り、奥の部屋に入りベッドに寝て天井に貼られた写真や絵を観ていた。


旧日銀の昔は行員達がせわしなく働いていただろう広い部屋がまるでおばあちゃんの離れの原爆で斜めに傾いだ建物の二階に居るような感覚になり胸が詰まる思いがした。

びっくりした!

爆心地近くで七十数年を経た被爆建物で、私だけのために演じてもらえる時間。



新庄さんに、天井にもそういうポスターを貼って眺めていた話を聴いてもらっている時、天井が剥がれて彼女と私の間に落ちてきた。たまたまね。
演じてもらったおばあちゃんの離れの二階では被爆して逃げてきた若い女性が血を吐いて髪が抜けてその部屋で死んだと聞いていたけれど、そういう話はいくらでもこの辺ではあるので私は別に怖いとも思わすに住んでいた。
親元を離れてそこに居た時、おばあちゃんに米のとぎ方や煮物も教えてもらった。今は倒されてそこは新しい家が建っている。

今日その後彼女は「ひろしまの家」というパフォーマンスをされています。


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