11月の俳句会の兼題は「冬の星一切」☆
2020年11月13日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第七十四号(令和二年十一月)
十一月八日(日)、気が付けば、立冬が過ぎ今年もあと二ヶ月足らずとなった。カズドさんの「KAZUDO」個展の会場をお借りして、新たにカズドさんと欠席投句の五名を含めて十六名の参加者で六時に、いつも通りに始まった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「冬の星一切」
うさぎ座は前足揃え逃げる前 風外
明石焼き一味チカッと冬の星 釜爺
オリオンの放つ光に澄む心 カズド
オリオンに撃ち落されんコロナの炎(ひ) 六星
弟と見たオリオンを甥と見る 中中
迷ひ来て位置確かむる寒北斗 茂樹
襟立てて犬と見上げる枯れ木星 進
コンパクト煌めき出すは冬の星 愛幸
遠回り公園で待つ枯木星 厚子
○風呂焚きの手を休めては冬の星 ねむ女
会ったことなき父恋し冬の星 走波
消すことのできぬあやまち冬の星 麦
◎荒星やSECOMのキーの薄っぺら 新治
○冬の星三角形が定まらず 梢ゑ
◎閉店を惜しむ行列冬の星 たつみ
○内なるを紡ぐ人らよ冬銀河 えこ
当季雑詠
◎大空に数千頭の羊雲 風外
神無月出雲に飛んで集結し 風外
懐にマスク探りつペダル止む 釜爺
○枯れ落葉蹴とばしている十二才 釜爺
秋深し積ん読本が出番待ち カズド
ほし柿の見せる風情に暮れる秋 カズド

○路地に猫次の路地にも猫の秋 六星
○空振りの赤いラケット小六月 六星
◎冬霧を吸ひ膨らむる踏み葉の香 中中
雨垂れの古民家カフェー山眠る 中中
比治山より宇品眼下に石蕗日和 茂樹
○冬うららカレーのためのうつわ展 茂樹
青空を小さき鷹の昇りけり 進
街中に人も少なし初時雨 進
遅れ香のひいらぎ木犀雨けむる 愛幸
水筒の麦茶をホットに変へにけり 愛幸
八百万(やおよろず)神を感じる日向ぼこ 厚子
◎小春日やハト、ハト、スズメおじいちゃん 厚子
◎いびつなる姿よろしきラ・フランス ねむ女
○五色幕の影の揺らぐや報恩講 ねむ女
日の丸を掲げる家に文化の日 走波
ギャラリーに入りてひとまづ柚子茶かな 走波
○くつ下のダーニングなど一茶の忌 麦
川べりにサギの点描初時雨 麦
○冬晴や鉢に死なせしものいくつ 新治
落葉落葉水辺の着ぐるみの子等へ 新治
○どんぐりの終着地となり脱衣場 梢ゑ
○草じらみ付けて帰りの靴の紐 梢ゑ
風そよぐ泡立草の波頭 たつみ

秋刀魚焼くにほい団地の夕まぐれ たつみ
金木犀雨上がりの朝路を染め えこ
子ら「めだかの学校」のごと小春日和 えこ
(句会寸描)
*兼題の「冬の星一切」は、新治さんとたつみさんが一位を分け合った。雑詠は、大接戦の末、風外さん、中中さん、厚子さん、ねむ女さんが一位を分け合った。先月から選句数を多くした関係で、兼題、雑詠共、特定の句に偏ることなく、かなり万遍なく分散した選となった。
*兼題「冬の星一切」
◎荒星やSECOMのキーの薄っぺら 新治
コロナ禍により、下五の「薄っぺら」が響き、世相を反映したような句となった。警備員が、「SECOMのキー」を持って夜間確認しながら廻っている景が見えてくるという声も出た。
◎閉店を惜しむ行列冬の星 たつみ
こちらもコロナ禍の影響により、やむなく店を閉じている様子を詠まれているように思える。寒空の中、常連客の長蛇の列が見えてくる。
○風呂焚きの手を休めては冬の星 ねむ女
薪で風呂を沸かしていた頃のことが懐かしく思い出される。寒空の中、満天の冬銀河を楽しみつつ薪をくべている様子が目に浮かぶ。
○冬の星三角形が定まらず 梢ゑ
恐らくオリオン座のべテルギウスを基点とした冬の大三角形を探しているものと思われるが、別の三角形の星座かもしれない。いずれにしても、夜空を見上げて一生懸命に星を探している様子が微笑ましい。
○内なるを紡ぐ人らよ冬銀河 えこ
何かを紡いでいるようであるが、細やかな紡ぎの作業と大きな「冬銀河」の対比に、冬らしい暮らしぶりが見えてくる。
*当季雑詠
◎大空に数千頭の羊雲 風外
大胆に「数千頭」と詠み込みスケールの大きな句となった。丸みを帯びた大きな一塊の雲が、羊のようにゆったり動いている様子も想像できる。
◎冬霧を吸ひ膨らむる踏み葉の香 中中
見逃しそうな細やかな情景をよく観察されている。ただ動詞を連ねている使い方が少し気になる。
◎小春日やハト、ハト、スズメおじいちゃん 厚子
「小春日」の公園あたりの風景が、ぱっと目に浮かび、リズムやテンポもよい。ただ、鳥の片仮名表記や句読点を入れていることに対しては、推敲の余地がある。
◎いびつなる姿よろしきラ・フランス ねむ女
いびつな「ラ・フランス」を逆手に取ってずばり「姿よろしき」と言い切ったところに、いかにも「ラ・フランス」らしい優雅さが滲み出ている。
○枯れ落葉蹴とばしている十二才 釜爺
反抗期や無邪気な少年などの様子がいろいろと想像できて、良くまとまっている。
○路地に猫次の路地にも猫の秋 六星
作者によると、尾道に行かれた時に詠まれたそうだが、納得の句である。「路地」と「猫」のリフレインが、よく効いていて、尾道らしさを十二分に引き立て、下五の「猫の秋」も、さわやかで心地よく響く。
○空振りの赤いラケット小六月 六星
「空振り」と「小六月」が、よく馴染んでいる。「空振り」がいかにもユーモラスで微笑ましい。
○冬うららカレーのためのうつわ展 茂樹
通りががった店に貼ってあった「カレーのためのうつわ展」のちらしの表記が面白かった。
○五色幕の影の揺らぐや報恩講 ねむ女
中七の「影の揺らぐや」で、「報恩講」に出入りする真宗門徒の皆さんの出入りする様子が、想像できる。
○くつ下のダーニングなど一茶の忌 麦
「継ぎ当て」といわず今風の「ダーニング」を持ってきたところがユニークだ。江戸時代の「一茶」の人間性と重ね合わせたところが見えてきて面白い。
○冬晴や鉢に死なせしものいくつ 新治
良く晴れた寒々とした日に、これまでも何度となく枯らせた鉢を眺めている様子が見えてくる。
○どんぐりの終着地となり脱衣場 梢ゑ
「どんぐりの終着地」が面白い。脱衣場で子供らの、ポケットからのどんぐりが転がっていく様子が目に浮かぶ。
○草じらみ付けて帰りの靴の紐 梢ゑ
誰しも一度は、経験のあることだが、「草じらみ」の付いた「靴の紐」を眺めて、辿ってきた道を思い浮かべているものと想像できる。
*次回予定
日時 十二月六日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「炬燵」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
十一月八日(日)、気が付けば、立冬が過ぎ今年もあと二ヶ月足らずとなった。カズドさんの「KAZUDO」個展の会場をお借りして、新たにカズドさんと欠席投句の五名を含めて十六名の参加者で六時に、いつも通りに始まった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「冬の星一切」
うさぎ座は前足揃え逃げる前 風外
明石焼き一味チカッと冬の星 釜爺
オリオンの放つ光に澄む心 カズド
オリオンに撃ち落されんコロナの炎(ひ) 六星
弟と見たオリオンを甥と見る 中中
迷ひ来て位置確かむる寒北斗 茂樹
襟立てて犬と見上げる枯れ木星 進
コンパクト煌めき出すは冬の星 愛幸
遠回り公園で待つ枯木星 厚子
○風呂焚きの手を休めては冬の星 ねむ女
会ったことなき父恋し冬の星 走波
消すことのできぬあやまち冬の星 麦
◎荒星やSECOMのキーの薄っぺら 新治
○冬の星三角形が定まらず 梢ゑ
◎閉店を惜しむ行列冬の星 たつみ
○内なるを紡ぐ人らよ冬銀河 えこ
当季雑詠
◎大空に数千頭の羊雲 風外
神無月出雲に飛んで集結し 風外
懐にマスク探りつペダル止む 釜爺
○枯れ落葉蹴とばしている十二才 釜爺
秋深し積ん読本が出番待ち カズド
ほし柿の見せる風情に暮れる秋 カズド

○路地に猫次の路地にも猫の秋 六星
○空振りの赤いラケット小六月 六星
◎冬霧を吸ひ膨らむる踏み葉の香 中中
雨垂れの古民家カフェー山眠る 中中
比治山より宇品眼下に石蕗日和 茂樹
○冬うららカレーのためのうつわ展 茂樹
青空を小さき鷹の昇りけり 進
街中に人も少なし初時雨 進
遅れ香のひいらぎ木犀雨けむる 愛幸
水筒の麦茶をホットに変へにけり 愛幸
八百万(やおよろず)神を感じる日向ぼこ 厚子
◎小春日やハト、ハト、スズメおじいちゃん 厚子
◎いびつなる姿よろしきラ・フランス ねむ女
○五色幕の影の揺らぐや報恩講 ねむ女
日の丸を掲げる家に文化の日 走波
ギャラリーに入りてひとまづ柚子茶かな 走波
○くつ下のダーニングなど一茶の忌 麦
川べりにサギの点描初時雨 麦
○冬晴や鉢に死なせしものいくつ 新治
落葉落葉水辺の着ぐるみの子等へ 新治
○どんぐりの終着地となり脱衣場 梢ゑ
○草じらみ付けて帰りの靴の紐 梢ゑ
風そよぐ泡立草の波頭 たつみ

秋刀魚焼くにほい団地の夕まぐれ たつみ
金木犀雨上がりの朝路を染め えこ
子ら「めだかの学校」のごと小春日和 えこ
(句会寸描)
*兼題の「冬の星一切」は、新治さんとたつみさんが一位を分け合った。雑詠は、大接戦の末、風外さん、中中さん、厚子さん、ねむ女さんが一位を分け合った。先月から選句数を多くした関係で、兼題、雑詠共、特定の句に偏ることなく、かなり万遍なく分散した選となった。
*兼題「冬の星一切」
◎荒星やSECOMのキーの薄っぺら 新治
コロナ禍により、下五の「薄っぺら」が響き、世相を反映したような句となった。警備員が、「SECOMのキー」を持って夜間確認しながら廻っている景が見えてくるという声も出た。
◎閉店を惜しむ行列冬の星 たつみ
こちらもコロナ禍の影響により、やむなく店を閉じている様子を詠まれているように思える。寒空の中、常連客の長蛇の列が見えてくる。
○風呂焚きの手を休めては冬の星 ねむ女
薪で風呂を沸かしていた頃のことが懐かしく思い出される。寒空の中、満天の冬銀河を楽しみつつ薪をくべている様子が目に浮かぶ。
○冬の星三角形が定まらず 梢ゑ
恐らくオリオン座のべテルギウスを基点とした冬の大三角形を探しているものと思われるが、別の三角形の星座かもしれない。いずれにしても、夜空を見上げて一生懸命に星を探している様子が微笑ましい。
○内なるを紡ぐ人らよ冬銀河 えこ
何かを紡いでいるようであるが、細やかな紡ぎの作業と大きな「冬銀河」の対比に、冬らしい暮らしぶりが見えてくる。
*当季雑詠
◎大空に数千頭の羊雲 風外
大胆に「数千頭」と詠み込みスケールの大きな句となった。丸みを帯びた大きな一塊の雲が、羊のようにゆったり動いている様子も想像できる。
◎冬霧を吸ひ膨らむる踏み葉の香 中中
見逃しそうな細やかな情景をよく観察されている。ただ動詞を連ねている使い方が少し気になる。
◎小春日やハト、ハト、スズメおじいちゃん 厚子
「小春日」の公園あたりの風景が、ぱっと目に浮かび、リズムやテンポもよい。ただ、鳥の片仮名表記や句読点を入れていることに対しては、推敲の余地がある。
◎いびつなる姿よろしきラ・フランス ねむ女
いびつな「ラ・フランス」を逆手に取ってずばり「姿よろしき」と言い切ったところに、いかにも「ラ・フランス」らしい優雅さが滲み出ている。
○枯れ落葉蹴とばしている十二才 釜爺
反抗期や無邪気な少年などの様子がいろいろと想像できて、良くまとまっている。
○路地に猫次の路地にも猫の秋 六星
作者によると、尾道に行かれた時に詠まれたそうだが、納得の句である。「路地」と「猫」のリフレインが、よく効いていて、尾道らしさを十二分に引き立て、下五の「猫の秋」も、さわやかで心地よく響く。
○空振りの赤いラケット小六月 六星
「空振り」と「小六月」が、よく馴染んでいる。「空振り」がいかにもユーモラスで微笑ましい。
○冬うららカレーのためのうつわ展 茂樹
通りががった店に貼ってあった「カレーのためのうつわ展」のちらしの表記が面白かった。
○五色幕の影の揺らぐや報恩講 ねむ女
中七の「影の揺らぐや」で、「報恩講」に出入りする真宗門徒の皆さんの出入りする様子が、想像できる。
○くつ下のダーニングなど一茶の忌 麦
「継ぎ当て」といわず今風の「ダーニング」を持ってきたところがユニークだ。江戸時代の「一茶」の人間性と重ね合わせたところが見えてきて面白い。
○冬晴や鉢に死なせしものいくつ 新治
良く晴れた寒々とした日に、これまでも何度となく枯らせた鉢を眺めている様子が見えてくる。
○どんぐりの終着地となり脱衣場 梢ゑ
「どんぐりの終着地」が面白い。脱衣場で子供らの、ポケットからのどんぐりが転がっていく様子が目に浮かぶ。
○草じらみ付けて帰りの靴の紐 梢ゑ
誰しも一度は、経験のあることだが、「草じらみ」の付いた「靴の紐」を眺めて、辿ってきた道を思い浮かべているものと想像できる。
*次回予定
日時 十二月六日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「炬燵」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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