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檸檬と書けなくて・・・九月の句会。🍋

2020年09月14日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報 第七十二号(令和二年九月) 

九月六日(日)、折りしも台風十号接近の中、菅田茂さんの「時間の分泌物 細密画教室の十五年」展の会場をお借りして、初参加の菅田茂さんと欠席投句の五名を含めて十二名の参加者で六時に、いつも通りに始まった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)


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兼題 「檸檬」

丁寧に檸檬と書いて囓りたり  ねむ女
◎カンバスの檸檬の青のスッパさよ  六星
颱風のくる前に摘む青檸檬  梢ゑ
青青き庭鉢レモン色気なし  風外
○君の手にガリリ歯を立てたし檸檬  えこ
○静物の檸檬に目を覚ます小瓶  中中
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檸檬一つ歩める蟻の戸惑いを見る  茂
○唐揚げに檸檬絞ってビール注ぐ  進
青春を譬(たと)えるならば檸檬味  愛幸
○瀬戸内のレモン畑に陽が溢る  厚子
檸檬の香道化師の朝の歌  釜爺
○檸檬置く場末のバーのカウンター  茂樹
 



当季雑詠

新涼や古代の杉の湯舟かな  ねむ女
余波の風吹き渡りたる盆の月  ねむ女
「デンタきた」肩車の子秋晴るる  六星
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うそ寒き9回ツーダン席を立つ  六星
◎見つかりしパズルのパーツ夏の果て  梢ゑ
新涼や赤子泣く声いっしんに  梢ゑ
冥土まで何度鳴くのか法師蝉  風外
せんたくの間すりぬけ秋の蝶  風外
無花果の断面に見いる午后三時  えこ
写真立てに菓子と冷茶を今年の盆  えこ
広重の浮世絵のごと台風の橋  中中
四人家族で出発す青桐の実  中中
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蝉の屍に冷たき風の吹き行けり  茂
松虫の触角揺れる月の影  茂
ベランダに椅子出し愛でる月見かな  進
間引菜をもらうてうれし夕餉かな  進
○蜻蛉飛ぶ自転車カゴの右左  愛幸
夜明けの陽日差しの加減秋なりし  愛幸
○コンクリで匍匐(ほふく)前進(ぜんしん)秋の蝉  厚子
○影踏みて残暑の帰路や午後六時  厚子
へちま棚むかし昔の秘密基地  釜爺
昇(のぼ)さんや焼きもろこしをお食べやれ  釜爺
秋霖や暮色にけぶる街明り  茂樹
ふるさとの山に寄り添ふ葛の花  茂樹




(句会寸描)

*兼題の「檸檬」は、欠席の方の選が決め手となり、六星さんが、一位となった。雑詠は、梢ゑさんが断トツの一位となった。兼題は、季重なりが目立った。推敲の際に、今一度歳時記を開いて季語を確認する必要があると思われる。今回から欠席投句の方の選句も含めた上での高点句を採り上げることにした。



*兼題「檸檬」

◎カンバスの檸檬の青のスッパさよ  六星
亡くなられた丹田画伯を偲ばれた句である。下五の「スッパさよ」のに、画伯への哀悼の思いが込められている。只、「スッパさよ」の片仮名は、賛否両論出た。

○君の手にガリリ歯を立てたし檸檬  えこ
高村光太郎の智恵子抄「レモン哀歌」の一節からヒントを得て詠まれたようである。「君の手に」歯を立てるのか、「檸檬」に歯を立てるのか、今一つはっきりしないので、推敲の余地がある。

○静物の檸檬に目を覚ます小瓶  中中
 五六六の破調に加え、「小瓶」を擬人化して不思議な感じになっている。

○唐揚げに檸檬絞ってビール注ぐ  進
暑い夏を凌ぐには、これで決まりというような左党にはたまらない句である。只、「ビール」と「檸檬」の季重なりが惜しまれる。

○瀬戸内のレモン畑に陽が溢る  厚子
 「レモン畑」の風景が素直に詠まれている。「レモン」がよく育っている様子も目に浮かぶ。

○檸檬置く場末のバーのカウンター  茂樹
一昔前は、こういうところが、全国各地に沢山あったような気がする。



*当季雑詠

◎見つかりしパズルのパーツ夏の果て  梢ゑ
「パーツ」を見つけた安ど感と「夏」の終わりの一抹の寂しさが上手く絡み合っている。今年は、コロナ禍で引きこもりのような生活が続いているので、尚更、印象深い句となった。

○蜻蛉飛ぶ自転車カゴの右左  愛幸
「蜻蛉」と「自転車カゴ」を取り合わせは、以前からよく目にするが、下五に「右左」と入れたことによって「蜻蛉」の交互に動く様子が鮮明になった。

○コンクリで匍匐(ほふく)前進(ぜんしん)秋の蝉  厚子
中七の「匍匐(ほふく)前進(ぜんしん)」で「秋の蝉」の最期の力を振り絞る様子がそれとなく伝わってくる。

○影踏みて残暑の帰路や午後六時  厚子
まだ厳しい暑さの残る中、帰路につく様子が想像できる。只、中七の中の「帰路」だけで夕方ということは分かるので、下五にどんな場所だったかなどを入れれば、もっと景が浮かび上がると思われる。




*次回予定
日時 十月四日(日)十八時〜二十時 
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「夜長」一句と当季雑詠を二句 

       (茂樹 記)



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