兼題「二月」。
2020年02月10日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第六十六号(令和二年二月)
二月二日(日)、春を間近に感じるよい陽気となった。
松本香菜子さんの個展の会場をお借りして、欠席投句の松本香菜子さん、釜爺さんを含めて十七名の参加者で六時に、いつものように始まった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記順列記)

兼題 「二月」
○二ン月や願書の束のきらきらす 新治
色褪せし供華そのままに墓地二月 ねむ女
二月商戦横目に和菓子を買い 紺
如月や遠く浪立つ瀬戸の海 たつみ
吐く息の白さもうれし二月かな 進
秘めた恋二月の雨にネオンゆれ 風外
白熊の練乳甘し二月尽 六星
二月には鬼は外言って豆なげる 享牧(みまき)
彷徨へりマスク求める二月かな 厚子
猫を呼ぶ吾の声高し二月かな 走波
○黄のコート猫背直しに行く二月 えこ
二ん月の二階の窓を全開す 茂樹
◎片付けが終はらず迎へし二月かな 香菜子
未明の香湯呑みの底に二月あり 釜爺
当季雑詠
粧ひの要らぬ逢瀬や冬薔薇 新治
水仙や雨に暗がる墓碑の列 新治
秘めごとのあらはれいづる竜の玉 ねむ女
商店街の小さき画廊や春立ちぬ ねむ女
枯れ枝が突き刺す虚空冴え返る 紺
○裏通り目をそらす猫春の闇 紺
気もそぞろまたセーターの目を飛ばす たつみ
大家族でもなしマスク箱で買ふ たつみ
早春の山にかかりし今朝の月 進
残雪の山を染めゆく朝日かな 進
ひっそりと紅白の梅今見ごろ 風外
鬼は外リビングの隅乱れ散る 風外
◎春隣母の小袖の矢鱈縞 六星
◎息白し眼鏡を探す停留所 六星
白鳥や冷たい中で藻がごちそう 享牧
神遊伝統親しむ良い事だ 享牧
◎春昼や上着は置いてポストまで 厚子
忌々し駒返る草見て候 厚子
大寒と言ふもひねもす雨となり 走波
○手まり麩を小鉢にそえて春立つ日 走波
○太田川たっぷりとして春の午(ひる) えこ
◎ひとつ路逸れてお庭の紅き梅 えこ
対岸の芝うっすらと青みけり 茂樹
ふるさとを熱く語らひ寒明くる 茂樹
見上げれば星空かかる息白く 香菜子
慌てるななかなか解けぬ朝の霜 香菜子
三重坂ペダル軽がろ雪解風 釜爺
春立ちてキツネ一匹「フッ」と嗤う 釜爺
(句会寸描)
*兼題の「二月」は、欠席投句の香菜子さんが頭一つ抜け出し、一位となった。雑詠の方はまれに見る大接戦の末、六星さんと厚子さんとえこさんが一位を分け合った。兼題は、詠み易い季語のように思えたが、皆さんかなり苦労されたあとが見える。雑詠は、冬と春の狭間の時季と重なり、詠む範囲も広範囲となっていた。
*兼題 「二月」
◎片付けが終はらず迎へし二月かな 香菜子
一月にやり残したことを抱えて、二月を迎えた様子がよく出ている。ただ中七の「終わらず迎えた」の字余りが少し気になる。
○二ン月や願書の束のきらきらす 新治
作者によると仕事の配置替えで、「願書」を扱う職場につかれたようだ。それだけに、下五の「きらきらす」に当事者ならではの、独特の目線を感じる。
○黄のコート猫背直しに行く二月 えこ
春になって、身も心も前向きに進もうという姿勢が感じられる。
「黄のコート」は、いかにも春にふさわしい色である。
*当季雑詠
◎春隣母の小袖の矢鱈縞 六星
リズムが良く、「矢鱈縞」という特徴のある柄が、「春隣」とよく馴染んでいる。作者は、この「矢鱈縞」の着物姿で句会に出席されていた。

◎息白し眼鏡を探す停留所 六星
よく見る何気ない光景であるが、この一瞬を見逃さず上手く一句にまとめ上げられた。バスを待つ間の吐く息の白さと、停留所でメガネを探す様子がつぶさに見えてくる。
◎春昼や上着は置いてポストまで 厚子
少しぽかぽかした陽気のようである。明るい春の日差しが目に浮かぶ。
◎ひとつ路逸れてお庭の紅き梅 えこ
「ひとつ路逸れて」の措辞に意外性があって面白い。ただ中七の「逸れてお庭の」の「お」は、「庭」に対して、尊敬や慶事などの特別な場合を除き、つけるべきではないという意見も出た。
○裏通り目をそらす猫春の闇 紺
いろいろと想像を掻き立てられて面白い。中七の「目をそらす猫」は、ひょっとして失恋したのかもしれない。ただ、三段切れになっているところが、少し気になる。
○手まり麩を小鉢にそえて春立つ日 走波
丁寧に暮らしている様子が伺える。華やかな「手まり麩」が春の到来を感じさせる。
○太田川水たっぷりとして春の午(ひる) えこ
中七の「水たっぷりとして」は、のどかな春の雰囲気を感じさせる。下五の「春の午(ひる)」は、「昼」を意識した表現の工夫が見られる。

今月から俳句をコピーして選句するようにされました。
*次回予定
日時 三月八日(日) 十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
二月二日(日)、春を間近に感じるよい陽気となった。
松本香菜子さんの個展の会場をお借りして、欠席投句の松本香菜子さん、釜爺さんを含めて十七名の参加者で六時に、いつものように始まった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記順列記)

兼題 「二月」
○二ン月や願書の束のきらきらす 新治
色褪せし供華そのままに墓地二月 ねむ女
二月商戦横目に和菓子を買い 紺
如月や遠く浪立つ瀬戸の海 たつみ
吐く息の白さもうれし二月かな 進
秘めた恋二月の雨にネオンゆれ 風外
白熊の練乳甘し二月尽 六星
二月には鬼は外言って豆なげる 享牧(みまき)
彷徨へりマスク求める二月かな 厚子
猫を呼ぶ吾の声高し二月かな 走波
○黄のコート猫背直しに行く二月 えこ
二ん月の二階の窓を全開す 茂樹
◎片付けが終はらず迎へし二月かな 香菜子
未明の香湯呑みの底に二月あり 釜爺
当季雑詠
粧ひの要らぬ逢瀬や冬薔薇 新治
水仙や雨に暗がる墓碑の列 新治
秘めごとのあらはれいづる竜の玉 ねむ女
商店街の小さき画廊や春立ちぬ ねむ女
枯れ枝が突き刺す虚空冴え返る 紺
○裏通り目をそらす猫春の闇 紺
気もそぞろまたセーターの目を飛ばす たつみ
大家族でもなしマスク箱で買ふ たつみ
早春の山にかかりし今朝の月 進
残雪の山を染めゆく朝日かな 進
ひっそりと紅白の梅今見ごろ 風外
鬼は外リビングの隅乱れ散る 風外
◎春隣母の小袖の矢鱈縞 六星
◎息白し眼鏡を探す停留所 六星
白鳥や冷たい中で藻がごちそう 享牧
神遊伝統親しむ良い事だ 享牧
◎春昼や上着は置いてポストまで 厚子
忌々し駒返る草見て候 厚子
大寒と言ふもひねもす雨となり 走波
○手まり麩を小鉢にそえて春立つ日 走波
○太田川たっぷりとして春の午(ひる) えこ
◎ひとつ路逸れてお庭の紅き梅 えこ
対岸の芝うっすらと青みけり 茂樹
ふるさとを熱く語らひ寒明くる 茂樹
見上げれば星空かかる息白く 香菜子
慌てるななかなか解けぬ朝の霜 香菜子
三重坂ペダル軽がろ雪解風 釜爺
春立ちてキツネ一匹「フッ」と嗤う 釜爺
(句会寸描)
*兼題の「二月」は、欠席投句の香菜子さんが頭一つ抜け出し、一位となった。雑詠の方はまれに見る大接戦の末、六星さんと厚子さんとえこさんが一位を分け合った。兼題は、詠み易い季語のように思えたが、皆さんかなり苦労されたあとが見える。雑詠は、冬と春の狭間の時季と重なり、詠む範囲も広範囲となっていた。
*兼題 「二月」
◎片付けが終はらず迎へし二月かな 香菜子
一月にやり残したことを抱えて、二月を迎えた様子がよく出ている。ただ中七の「終わらず迎えた」の字余りが少し気になる。
○二ン月や願書の束のきらきらす 新治
作者によると仕事の配置替えで、「願書」を扱う職場につかれたようだ。それだけに、下五の「きらきらす」に当事者ならではの、独特の目線を感じる。
○黄のコート猫背直しに行く二月 えこ
春になって、身も心も前向きに進もうという姿勢が感じられる。
「黄のコート」は、いかにも春にふさわしい色である。
*当季雑詠
◎春隣母の小袖の矢鱈縞 六星
リズムが良く、「矢鱈縞」という特徴のある柄が、「春隣」とよく馴染んでいる。作者は、この「矢鱈縞」の着物姿で句会に出席されていた。

◎息白し眼鏡を探す停留所 六星
よく見る何気ない光景であるが、この一瞬を見逃さず上手く一句にまとめ上げられた。バスを待つ間の吐く息の白さと、停留所でメガネを探す様子がつぶさに見えてくる。
◎春昼や上着は置いてポストまで 厚子
少しぽかぽかした陽気のようである。明るい春の日差しが目に浮かぶ。
◎ひとつ路逸れてお庭の紅き梅 えこ
「ひとつ路逸れて」の措辞に意外性があって面白い。ただ中七の「逸れてお庭の」の「お」は、「庭」に対して、尊敬や慶事などの特別な場合を除き、つけるべきではないという意見も出た。
○裏通り目をそらす猫春の闇 紺
いろいろと想像を掻き立てられて面白い。中七の「目をそらす猫」は、ひょっとして失恋したのかもしれない。ただ、三段切れになっているところが、少し気になる。
○手まり麩を小鉢にそえて春立つ日 走波
丁寧に暮らしている様子が伺える。華やかな「手まり麩」が春の到来を感じさせる。
○太田川水たっぷりとして春の午(ひる) えこ
中七の「水たっぷりとして」は、のどかな春の雰囲気を感じさせる。下五の「春の午(ひる)」は、「昼」を意識した表現の工夫が見られる。

今月から俳句をコピーして選句するようにされました。
*次回予定
日時 三月八日(日) 十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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