六月の句会だより
2019年06月07日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第五十八号(令和元年六月)
六月二日(日)、最近のカープの快進撃に皆さんの足取りも心なしか軽いようだ。中丸寿絵さん・弘子さんの手作り展の会場をお借りして、欠席投句のたつみさんと風外さんを含めて十三名の参加者で六時開始となった。(たつみさんは席題でも欠席投句された)
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

席題 「回」
○青葉風轆轤を回す人のゐて ねむ女
初浴衣何気に誘う遠回り 朋子
夏祭り日程表の回りをり 走波
群れなして回る蛍か星空か 六星
回り終へたちまちうつつ走馬灯 新治
回天の基地黒ぐろと夏の海 下駄麿
短夜や編み糸ほどく空回り 麦
島の道遠回りして夏の海 厚子
薫風に歩きはじめた子の回る えこ
水鉄砲指で回してカウボーイ 七軒
◎明易や回天眠る周防灘 茂樹

とうかさん浴衣姿の回遊魚 たつみ
当季雑詠
曳山の眼ぎょろりと青嵐 ねむ女
嬉野の辺り一面麦の秋 ねむ女
ビル街や風に抗ふ日傘かな 朋子
母読みし「舞姫」めくり風入す 朋子
物干場満艦飾や梅雨間近 走波
小腹すき虫養いや夏の宵 走波
蒸し暑き夜深海の魚となる 六星
夏燕パチンコの前宙返り 六星
滝壺を離れて水の小声かな 新治
万緑の一角に張る万国旗 新治
バス停は南瓜のかたち佐賀の道 下駄麿
リネンの皺はらいオリーブの花置く 下駄麿
◎なにもかも許してやるわ罌粟の花 麦

そういえば山の桑の実熟れる頃 麦
梅雨空に傘は無用と家を出る 厚子
遠き日にラムネの栓抜きパッと飲む 厚子
輝けり届かぬ枝の桜桃(さくらんぼ) えこ
殻の中どなたも同じ蝸牛 えこ
○景品は小瓶の闘魚たうかさん 七軒
○ショッピングカートに侍る竹婦人 七軒

◎夏蝶の影小刻みにアスファルト 茂樹
○フラットに飛びシャープに過る夏つばめ 茂樹
梔子の香がすべて十六の君 たつみ
学び舎に並ぶがごとし桐の花 たつみ
落選か夢を見るのか夏県美 風外
蛍とぶ黒き竹林川光る 風外
(句会寸描)
*席題の「回」は、僅差で茂樹が一位となった。雑詠は麦さんと茂樹が一位を分け合った。席題の方は、かなりの人に「回る」のイメージが付きまとったようだ。雑詠の方は、選がばらけた割に点数の差が、意外についてしまった。
*席題 「回」
◎明易や回天眠る周防灘 茂樹
まだ訪れたことはないが、山口県の大津島に「回天記念館」や慰霊碑があるようだ。
○青葉風轆轤を回す人のゐて ねむ女
都会を離れた里山辺りの静かな佇まいで、陶芸に打ち込んでいる人の姿が想像できる。心地よい青葉風が吹き込んで、見物の人もリラックスしている雰囲気が伝わってくる。
*当季雑詠
◎なにもかも許してやるわ罌粟の花 麦
「なにもかも許してやるわ」の思い切った言い回しと「罌粟の花」が、絶妙に響き合っている。寸評の際、作者は男か女かとか、「罌粟の花」を見たことあるとかないとか、かなりの物議をかもした。
◎夏蝶の影小刻みにアスファルト 茂樹
夏蝶をじっくり観察したわけではないが、その細やかな動きからふと「小刻み」という言葉が思い浮かんだ。
○景品は小瓶の闘魚たうかさん 七軒
もうすぐ広島の風物詩の「たうかさん」がやってくるが、「小瓶の闘魚」を楽しみにしている作者の温かで繊細な視線が感じられる。
○ショッピングカートに侍る竹婦人 七軒
「竹婦人」の句としては、ユニークで意外性のあるものになっている。季語からしていかにも和風のイメージであるが、ここでは洋風な雰囲気と上手くかみ合っている。
○フラットに飛びシャープに過る夏つばめ 茂樹
見たままの景である。「シャープ」と「フラット」を引用したため「夏つばめが五線譜の半音の上げ下げのように飛んでいる」との声も聞かれた。
*次回予定
日時 七月七日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「祭り一切」を一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)

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