五月の俳句会便り
2019年05月16日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第五十七号(令和元年五月)
五月五日(日)、ゴールデンウイークと重なると同時に新年号の令和最初の句会となった。ヤンヤンさんの手作り作品展の個展会場をお借りして、欠席投句のたつみさんと今回初参加の作家のヤンヤンさんと丸町さんを含めて十四名の参加者で六時開始となった。(ヤンヤンさんの投句は当季雑詠の一句のみ)
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

兼題「夏野菜一切」
雨あがり胡瓜もみの青さかな 朋子
トマトいれカレーの色にノドがなり 丸町
水茄子の瑠璃色朝の至福なる ねむ女
○花びらをつけて朝採りの鞘豆 六星

ぬか漬のきゅうりの旬は半日か 風外
◎年越のごとき改元豌豆むく えこ
パパヤ生ふ国の皇子とうまれけり 下駄麿
裏木戸を開けてシャクシャクキャベツ切る 麦
手始めに二株ばかり茄子植うる 走波
ぬか床に瓜を押し込み息を吐く 厚子
湯気に湯気絡め蚕豆茹で上る 新治
空豆と小黒板に書く亭主 七軒
○弁当は飯と絹莢卵とじ 茂樹
改元の話ばかりなり胡瓜もみ たつみ
当季雑詠
新緑や能楽堂の鼓の音 朋子
一葉をあつめて万の青葉かな 朋子
夜夜にふえる氷いもの味 丸町
たたまれたポロシャツの下トレーナー 丸町
○ロリータは決して走らず春日傘 ねむ女
新緑の中に便りの届きたる ねむ女
鯉のぼり幼子の足ゆらりゆらり 六星
薫風や比治山のムーアの門くぐる 六星
いつからか着れない白のTシャツ ヤンヤン
葱坊主種取るだけで食べられず 風外
茄子和物国際的な野菜なり 風外
忌野忌は新幹線の席におり えこ
○風薫る外八文字の甲の白 えこ
うれしさは弁当箱の蕗のあお 下駄麿
だだいすとアスパラの皮引ん剝けり 下駄麿
さやさやとさざなみ渡る牡丹園 麦

風薫るテント張る音河川敷 麦
風薫るエリザベス号停泊す 走波
四月尽ブラックホールの初写真 走波
○夏めいて帽子のつばを直したる 厚子
○こどもの日手を引く父の歩が弾む 厚子
○五月来る産科の窓にテディベア 新治
風を編み風に織られて若楓 新治
○靴下を脱いで足組む南風 七軒
○樟若葉コントラバスを搬入す 七軒
老眼の検査してゐるみどりの日 茂樹
平成とつい書き損じ古茶すする 茂樹
◎いつの間に欠けた釦か更衣 たつみ
○朴の花みどり子の爪小さくて たつみ
(句会寸描)
*兼題の「夏野菜一切」は、大接戦の末、えこさんが一位となった。雑詠は頭一つ抜けて、たつみさんが一位となった。兼題の方は、今一つ季節的に実感に乏しく皆さん苦労されたようだ。雑詠の方は、個性的な句が数多く集まり、選もそれだけ分散した。
*兼題「夏野菜一切」
◎年越のごとき改元豌豆むく えこ
この度の改元はまさに正月を思わせるような雰囲気が漂っていた。正月なら餅やおせち料理だろうが、「豌豆むく」と落ち着いた季語を持ってきたところも生活感があって良い。
○花びらをつけて朝採りの鞘豆 六星
作者によると貰い物の「鞘豆」のようだが、ともすれば見逃しそうな花びらを見つけて、一句に仕立て上げたところが素晴らしい。
○弁当は飯と絹莢卵とじ 茂樹
我が家では、絹莢といえば、卵とじか炒め物のどちらかです。
*当季雑詠
◎いつの間に欠けた釦か更衣 たつみ
「欠けた釦」が、釦そのものが割れて欠けているのか、釦がなくなっているのか、議論が分かれた。いずれにしても、「更衣」の細やかな視線に作者の几帳面な生活ぶりがうかがえる。
○ロリータは決して走らず春日傘 ねむ女
「ロリータ」といえばロリータコンプレックスが思い浮かぶが、作者は別な思いで捉えており、「ロリータ」に対するこだわりが感じられる。
○風薫る外八文字の甲の白 えこ
下関の先帝祭のことを詠んでいるようであるが、実際に観ていなくても花魁姿で歩く様子が艶やかによく伝わってくる。ただ先帝祭は五月二日から四日まで行われる行事なので、春の季語が望ましい。

○夏めいて帽子のつばを直したる 厚子
何気ない日常のちょっとした仕草を、すぐ俳句に仕立てたのはさすがである。つばをどう直したかを想像してみるのも楽しい。
○こどもの日手を引く父の歩が弾む 厚子
この句も普段のさりげない様子を上手く詠みこんでいるが、下五の「歩が弾む」で子供よりむしろ父親の楽しんでいる様子がそれとなく伝わってくる。
○五月来る産科の窓にテディベア 新治
一読して景のよく見える分かりやすい句である。「産科」と「テディベア」の取り合わせもよく馴染んでいる
○靴下を脱いで足組む南風 七軒
どこかの海岸辺りのベンチにいる人の景であろうか。リラックスして、「南風」が素足に心地よい。日差しも適度なくらいに射しているように思われる。
○樟若葉コントラバスを搬入す 七軒
新緑、楽器の運搬車、演奏会場などの景がさっと目に浮かぶ。手入れされているであろうコントラバスに演奏前の緊張感も感じ取れる。
○朴の花みどり子の爪小さくて たつみ
「朴の花」はその大きさにも関わらず人目に付きにくい反面、どこか神秘的な美しさがある。穢れのない美しいもの同士の大小の対比が鮮やかである。
*次回予定
日時 六月二日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
五月五日(日)、ゴールデンウイークと重なると同時に新年号の令和最初の句会となった。ヤンヤンさんの手作り作品展の個展会場をお借りして、欠席投句のたつみさんと今回初参加の作家のヤンヤンさんと丸町さんを含めて十四名の参加者で六時開始となった。(ヤンヤンさんの投句は当季雑詠の一句のみ)
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

兼題「夏野菜一切」
雨あがり胡瓜もみの青さかな 朋子
トマトいれカレーの色にノドがなり 丸町
水茄子の瑠璃色朝の至福なる ねむ女
○花びらをつけて朝採りの鞘豆 六星

ぬか漬のきゅうりの旬は半日か 風外
◎年越のごとき改元豌豆むく えこ
パパヤ生ふ国の皇子とうまれけり 下駄麿
裏木戸を開けてシャクシャクキャベツ切る 麦
手始めに二株ばかり茄子植うる 走波
ぬか床に瓜を押し込み息を吐く 厚子
湯気に湯気絡め蚕豆茹で上る 新治
空豆と小黒板に書く亭主 七軒
○弁当は飯と絹莢卵とじ 茂樹
改元の話ばかりなり胡瓜もみ たつみ
当季雑詠
新緑や能楽堂の鼓の音 朋子
一葉をあつめて万の青葉かな 朋子
夜夜にふえる氷いもの味 丸町
たたまれたポロシャツの下トレーナー 丸町
○ロリータは決して走らず春日傘 ねむ女
新緑の中に便りの届きたる ねむ女
鯉のぼり幼子の足ゆらりゆらり 六星
薫風や比治山のムーアの門くぐる 六星
いつからか着れない白のTシャツ ヤンヤン
葱坊主種取るだけで食べられず 風外
茄子和物国際的な野菜なり 風外
忌野忌は新幹線の席におり えこ
○風薫る外八文字の甲の白 えこ
うれしさは弁当箱の蕗のあお 下駄麿
だだいすとアスパラの皮引ん剝けり 下駄麿
さやさやとさざなみ渡る牡丹園 麦

風薫るテント張る音河川敷 麦
風薫るエリザベス号停泊す 走波
四月尽ブラックホールの初写真 走波
○夏めいて帽子のつばを直したる 厚子
○こどもの日手を引く父の歩が弾む 厚子
○五月来る産科の窓にテディベア 新治
風を編み風に織られて若楓 新治
○靴下を脱いで足組む南風 七軒
○樟若葉コントラバスを搬入す 七軒
老眼の検査してゐるみどりの日 茂樹
平成とつい書き損じ古茶すする 茂樹
◎いつの間に欠けた釦か更衣 たつみ
○朴の花みどり子の爪小さくて たつみ
(句会寸描)
*兼題の「夏野菜一切」は、大接戦の末、えこさんが一位となった。雑詠は頭一つ抜けて、たつみさんが一位となった。兼題の方は、今一つ季節的に実感に乏しく皆さん苦労されたようだ。雑詠の方は、個性的な句が数多く集まり、選もそれだけ分散した。
*兼題「夏野菜一切」
◎年越のごとき改元豌豆むく えこ
この度の改元はまさに正月を思わせるような雰囲気が漂っていた。正月なら餅やおせち料理だろうが、「豌豆むく」と落ち着いた季語を持ってきたところも生活感があって良い。
○花びらをつけて朝採りの鞘豆 六星
作者によると貰い物の「鞘豆」のようだが、ともすれば見逃しそうな花びらを見つけて、一句に仕立て上げたところが素晴らしい。
○弁当は飯と絹莢卵とじ 茂樹
我が家では、絹莢といえば、卵とじか炒め物のどちらかです。
*当季雑詠
◎いつの間に欠けた釦か更衣 たつみ
「欠けた釦」が、釦そのものが割れて欠けているのか、釦がなくなっているのか、議論が分かれた。いずれにしても、「更衣」の細やかな視線に作者の几帳面な生活ぶりがうかがえる。
○ロリータは決して走らず春日傘 ねむ女
「ロリータ」といえばロリータコンプレックスが思い浮かぶが、作者は別な思いで捉えており、「ロリータ」に対するこだわりが感じられる。
○風薫る外八文字の甲の白 えこ
下関の先帝祭のことを詠んでいるようであるが、実際に観ていなくても花魁姿で歩く様子が艶やかによく伝わってくる。ただ先帝祭は五月二日から四日まで行われる行事なので、春の季語が望ましい。

○夏めいて帽子のつばを直したる 厚子
何気ない日常のちょっとした仕草を、すぐ俳句に仕立てたのはさすがである。つばをどう直したかを想像してみるのも楽しい。
○こどもの日手を引く父の歩が弾む 厚子
この句も普段のさりげない様子を上手く詠みこんでいるが、下五の「歩が弾む」で子供よりむしろ父親の楽しんでいる様子がそれとなく伝わってくる。
○五月来る産科の窓にテディベア 新治
一読して景のよく見える分かりやすい句である。「産科」と「テディベア」の取り合わせもよく馴染んでいる
○靴下を脱いで足組む南風 七軒
どこかの海岸辺りのベンチにいる人の景であろうか。リラックスして、「南風」が素足に心地よい。日差しも適度なくらいに射しているように思われる。
○樟若葉コントラバスを搬入す 七軒
新緑、楽器の運搬車、演奏会場などの景がさっと目に浮かぶ。手入れされているであろうコントラバスに演奏前の緊張感も感じ取れる。
○朴の花みどり子の爪小さくて たつみ
「朴の花」はその大きさにも関わらず人目に付きにくい反面、どこか神秘的な美しさがある。穢れのない美しいもの同士の大小の対比が鮮やかである。
*次回予定
日時 六月二日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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