三月の俳句会
2019年03月10日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報 第五十五号(平成三十一年三月)
三月三日(日)、今日は楽しい雛祭のはずが、前回に続き生憎の雨模様となった。水口和恵さんの個展会場をお借りして、十二名の参加者で六時開始となった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

席題 「父」
○土筆摘む父を嫌ひて父に似て ねむ女
佐保姫が父の庭にも色付けり 厚子
◎青き踏む先行く父の歩幅かな たつみ
引退の春を迎えて父ひとり りう子
SLパレオエクスプレス
沿線の桜秩父に鉄走る 六星
ヒゲ親父ときわ荘にて桃の宴 下駄麿
潮干狩モノクロ父の上着きて えこ
芽吹山あっけらかんと父は禿げ 新治
戦死した父母も亡くなり春迎ふ 走波
◎猫の子を拾ひて父の帰宅かな 朋子
船頭に父の面影眼張つり 七軒

手作りの施設の父の紙雛 茂樹
当季雑詠
口あけて声の遅るる仔猫かな ねむ女
龍宮の使ひ現る浅き春 ねむ女
沿線の小駅に蛙待ち受けり 厚子
木蓮を見上げて透ける空の青 厚子
二階からドラム叩く音山笑ふ たつみ
地下街に鳩迷い来て冴返る たつみ
心の闇抜けし娘に雛飾らん りう子
ロンドンで買った春色コート着る りう子
○春日向ラーメン店の列に居り 六星
満天の星白木蓮の蕾 六星

枝垂れ梅ジャンドル夫人落涙す 下駄麿
桃一枝かざして太夫登場す 下駄麿
○夕暮れに木蓮の白明日は明日 えこ
泣く子らよ園庭は桜色のじゅうたん えこ
○工場群のパイプは迷路春の闇 新治
竪琴のさざめくごとく春の波 新治
◎なんとなく息ひそめたる春の闇 走波
○手作りの栞はさんで不器男の忌 走波
早春や北斎の筆生命満ち 朋子
吾子折りし少し泣きそな雛の顔 朋子
日本のたこたこあがれモンペリエ 七軒
手を引かれ息はとどかず風車 七軒
たてよこに水路幾筋風光る 茂樹
玄関の鏡に映る内裏雛 茂樹
(句会寸描)
*席題の「父」は、たつみさんと朋子さんが一位を分け合った。雑詠は大接戦の結果、走波さんが一位となった。席題の方は、いわゆる自分の父のイメージで作られた句が圧倒的に多かった。雑詠の方は、かなりバラエティーに富んでおり、その結果、選もほぼ偏りなく分かれた。
*席題「父」
◎青き踏む先行く父の歩幅かな たつみ
講評では「先行く父」の年齢が話題になり若そうなお父さんと云う声も出た。若ければ歩幅は広いし老いていれば逆に狭くなる。
いずれにしても、溌溂とした父の感じが「青き踏む」によって十
分に伝わってくる。
◎猫の子を拾ひて父の帰宅かな 朋子
拾ったのが、子供ではなく「父」というところに、どことなく優しいお父さんの姿が浮かび上がってくる。
○土筆摘む父を嫌ひて父に似て ねむ女
遠き日の「父」を回想しているようである。若いころ父を嫌っていたが、父の年齢になり、しみじみと自分も「父」と同じような性格であることを実感するようになった。「土筆摘む」がよく効いている。
*当季雑詠
◎なんとなく息ひそめたる春の闇 走波
「なんとなく」を俳句に入れるには、使いづらいがこの句にはぴったり合っているとの声が出た。上五から中七にかけての措辞に「春の闇」の暖かさを感じる。
○春日向ラーメン店の列に居り 六星
どこにでもありそうな景であるが、「春日向」がよく効いている。夏でもなく秋でもなく冬でもなく、春であるところに、ごく自然な臨場感が伝わってくる。
○夕暮れに木蓮の白明日は明日 えこ
夕暮れ時の美しい木蓮の姿にしばし見とれている。ただ、「木蓮」だと花の色は紫なので、この句の場合「白(はく)木蓮(れん)」か「はくれん」などにすべきと思われる。
○工場群のパイプは迷路春の闇 新治
作者によると周南のコンビナートの景のようである。最近の人気スポットになっていて、パイプの迷路には無機質な美しさがある。ただ句会後に「春の闇」では、その景は見えてこないのではとの声も出た。
○手作りの栞はさんで不器男の忌 走波
「芝不器男」の句集でも読んでいる途中なのであろうか。「手作りの栞」に温か味を感じる。どんな素敵な栞なのでしょう・・・。
*次回予定
日時 四月七日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「燕」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
^^^^^^^^^^^^^^^^
今月は句会古メンバーの風外さん麦さん華院さんがお休みでさみしい感じ!
当日お題の決まる「席題」は苦手ですが今回は「父」になり、私の父はなかなかの俳句の達人でありましたが「乳」が好きな人で、父というと乳とは切り離せず、結局父のことは書かずに恩田さんのいる秩父の鉄道のことにしました。笑 六星
三月三日(日)、今日は楽しい雛祭のはずが、前回に続き生憎の雨模様となった。水口和恵さんの個展会場をお借りして、十二名の参加者で六時開始となった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

席題 「父」
○土筆摘む父を嫌ひて父に似て ねむ女
佐保姫が父の庭にも色付けり 厚子
◎青き踏む先行く父の歩幅かな たつみ
引退の春を迎えて父ひとり りう子
SLパレオエクスプレス
沿線の桜秩父に鉄走る 六星
ヒゲ親父ときわ荘にて桃の宴 下駄麿
潮干狩モノクロ父の上着きて えこ
芽吹山あっけらかんと父は禿げ 新治
戦死した父母も亡くなり春迎ふ 走波
◎猫の子を拾ひて父の帰宅かな 朋子
船頭に父の面影眼張つり 七軒

手作りの施設の父の紙雛 茂樹
当季雑詠
口あけて声の遅るる仔猫かな ねむ女
龍宮の使ひ現る浅き春 ねむ女
沿線の小駅に蛙待ち受けり 厚子
木蓮を見上げて透ける空の青 厚子
二階からドラム叩く音山笑ふ たつみ
地下街に鳩迷い来て冴返る たつみ
心の闇抜けし娘に雛飾らん りう子
ロンドンで買った春色コート着る りう子
○春日向ラーメン店の列に居り 六星
満天の星白木蓮の蕾 六星

枝垂れ梅ジャンドル夫人落涙す 下駄麿
桃一枝かざして太夫登場す 下駄麿
○夕暮れに木蓮の白明日は明日 えこ
泣く子らよ園庭は桜色のじゅうたん えこ
○工場群のパイプは迷路春の闇 新治
竪琴のさざめくごとく春の波 新治
◎なんとなく息ひそめたる春の闇 走波
○手作りの栞はさんで不器男の忌 走波
早春や北斎の筆生命満ち 朋子
吾子折りし少し泣きそな雛の顔 朋子
日本のたこたこあがれモンペリエ 七軒
手を引かれ息はとどかず風車 七軒
たてよこに水路幾筋風光る 茂樹
玄関の鏡に映る内裏雛 茂樹
(句会寸描)
*席題の「父」は、たつみさんと朋子さんが一位を分け合った。雑詠は大接戦の結果、走波さんが一位となった。席題の方は、いわゆる自分の父のイメージで作られた句が圧倒的に多かった。雑詠の方は、かなりバラエティーに富んでおり、その結果、選もほぼ偏りなく分かれた。
*席題「父」
◎青き踏む先行く父の歩幅かな たつみ
講評では「先行く父」の年齢が話題になり若そうなお父さんと云う声も出た。若ければ歩幅は広いし老いていれば逆に狭くなる。
いずれにしても、溌溂とした父の感じが「青き踏む」によって十
分に伝わってくる。
◎猫の子を拾ひて父の帰宅かな 朋子
拾ったのが、子供ではなく「父」というところに、どことなく優しいお父さんの姿が浮かび上がってくる。
○土筆摘む父を嫌ひて父に似て ねむ女
遠き日の「父」を回想しているようである。若いころ父を嫌っていたが、父の年齢になり、しみじみと自分も「父」と同じような性格であることを実感するようになった。「土筆摘む」がよく効いている。
*当季雑詠
◎なんとなく息ひそめたる春の闇 走波
「なんとなく」を俳句に入れるには、使いづらいがこの句にはぴったり合っているとの声が出た。上五から中七にかけての措辞に「春の闇」の暖かさを感じる。
○春日向ラーメン店の列に居り 六星
どこにでもありそうな景であるが、「春日向」がよく効いている。夏でもなく秋でもなく冬でもなく、春であるところに、ごく自然な臨場感が伝わってくる。
○夕暮れに木蓮の白明日は明日 えこ
夕暮れ時の美しい木蓮の姿にしばし見とれている。ただ、「木蓮」だと花の色は紫なので、この句の場合「白(はく)木蓮(れん)」か「はくれん」などにすべきと思われる。
○工場群のパイプは迷路春の闇 新治
作者によると周南のコンビナートの景のようである。最近の人気スポットになっていて、パイプの迷路には無機質な美しさがある。ただ句会後に「春の闇」では、その景は見えてこないのではとの声も出た。
○手作りの栞はさんで不器男の忌 走波
「芝不器男」の句集でも読んでいる途中なのであろうか。「手作りの栞」に温か味を感じる。どんな素敵な栞なのでしょう・・・。
*次回予定
日時 四月七日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「燕」一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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今月は句会古メンバーの風外さん麦さん華院さんがお休みでさみしい感じ!
当日お題の決まる「席題」は苦手ですが今回は「父」になり、私の父はなかなかの俳句の達人でありましたが「乳」が好きな人で、父というと乳とは切り離せず、結局父のことは書かずに恩田さんのいる秩父の鉄道のことにしました。笑 六星
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