二月の俳句会 「寒明」
2019年02月11日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第五十四号(平成三十一年二月)
二月三日(日)、ちょうど節分と重なったが、生憎の雨模様となった。中寿賀亮介さんの個展会場をお借りして、十二名の参加者で六時開始となった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

兼題「寒明」
珈琲を淹れる音のみ寒の明け たつみ
○昨日まで無かった更地寒の明け 朋子
寒明けやじょうろひとさし水光る 華院
指たどる点字プレート寒の明 走波
烏群れ貪り食ふや寒の明け 六星
正蔵のくびのほそさや寒ゆるぶ 下駄麿
プロ野球チケット先行寒明ける 厚子
ものごとも明けよ今年の寒の明け えこ
万歩計確と装着寒明くる ねむ女
◎大鳥居たてよこに伸び寒の明 新治
手摺もち階段下る寒の明 七軒
がん検診異常なき妻寒明くる 茂樹
当季雑詠
鬼やらひ組織の外に一抜ける たつみ
○薄氷や父の墓参の手桶水 たつみ
◎流感の夜の深さや静けさや 朋子
着ぶくれて「だっこ」と吾子が両手上げ 朋子
立春や休業スーパー三(み)割引(わりびき) 華院
さっと茹で茎もコリコリ生若布 華院
○古書店で友待ち伏せる春隣 走波
風邪癒えてダイアナロスで珈琲を 走波
朝帰りしてダンボール猫の恋 六星

Draw by R nakasuga
○月連れて歩く二月の犬の尻 六星
めすネコのくにゃりと拠りて春立ちぬ 下駄麿

Draw by R nakasuga
◎ポケットの小銭もどかし蜆缶 下駄麿
浮かれ猫鳴き叫んでも家の中 厚子

Draw by R nakasuga
明日からと言い訳多い謝肉祭 厚子
留守宅の庭に立ちおりヒヤシンス えこ
コンビニにコスプレの鬼豆を売る えこ
脳味噌は胡桃の如し春隣 ねむ女
◎春隣掃除ロボットジグザグに ねむ女
冬晴や断たれし鉄路錆びに錆び 新治
声を透く古民家カフェの春障子 新治
まだ夜の巨大怪獣雪の山 七軒
皮裂けて礫は白き梅の花 七軒
老松を支えしワイヤ水温む 茂樹
○菜の花やいただき頃の背となりぬ 茂樹

(句会寸描)
*兼題の「寒明」は、新治さんが一位となり、雑詠は朋子さん、下駄麿さん、ねむ女さんが、一位を分け合った。兼題の方は、分かりやすい句に選が偏ったようだ。それに引きかえ雑詠の方は、個性的な句が多く、選も好みによって分かれた。時間が余ったので、点が入らなかった句に対して、なぜ採らなかったかなど述べていただき、大変興味深い感想がたくさん聞かれた。
*兼題「寒明」
◎大鳥居たてよこに伸び寒の明 新治
一見当たり前のようだが、中七の「たてよこに伸び」の「伸び」がよく効いていて、これから春を迎えようとする「寒の明」と上手くかみ合っている。
○昨日まで無かった更地寒の明け 朋子
最近よく見かける景色である。更地になった時期と「寒の明け」が重なったのが効果的で、寒さの底といった感じがすんなりと伝わってくる。
*当季雑詠
◎流感の夜の深さや静けさや 朋子
「流感」らしい孤独感がにじみ出ている。中七と下五の「や」の切れ字のリフレインも臨場感がある。
◎ポケットの小銭もどかし蜆缶 下駄麿
コミカルで庶民的な感じがして、路地裏の雰囲気が漂っている。リズムがよい。「蜆缶」に季節感がないとの声も出た。
◎春隣掃除ロボットジグザグに ねむ女
「ジグザグに」がいかにも「掃除ロボット」らしい。季語も「啓蟄や」だとつきすぎのような感じがするが、「春隣」で程よい感じになっている。
○薄氷や父の墓参の手桶水 たつみ
淡々と詠まれていて、景もよく見えてくる。「薄氷」にはその時に氷が張っていただけでなく、遠い過去のお父様の思い出のようなものも感じられる。
○古書店で友待ち伏せる春隣 走波
「古書店」がよく効いていて、話が弾みそうな友人と思われる。「春隣」もわくわく感があり効果的である。
○月連れて歩く二月の犬の尻 六星
ユーモラスな感じが伝わってくる。月もここではあたたかな感じがする。
○菜の花やいただき頃の背となりぬ 茂樹
決して食いしん坊のつもりはないが、菜の花に対してこういう見方をする人もいる。
*次回予定
日時 三月三日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
二月三日(日)、ちょうど節分と重なったが、生憎の雨模様となった。中寿賀亮介さんの個展会場をお借りして、十二名の参加者で六時開始となった。
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(清記逆順列記)

兼題「寒明」
珈琲を淹れる音のみ寒の明け たつみ
○昨日まで無かった更地寒の明け 朋子
寒明けやじょうろひとさし水光る 華院
指たどる点字プレート寒の明 走波
烏群れ貪り食ふや寒の明け 六星
正蔵のくびのほそさや寒ゆるぶ 下駄麿
プロ野球チケット先行寒明ける 厚子
ものごとも明けよ今年の寒の明け えこ
万歩計確と装着寒明くる ねむ女
◎大鳥居たてよこに伸び寒の明 新治
手摺もち階段下る寒の明 七軒
がん検診異常なき妻寒明くる 茂樹
当季雑詠
鬼やらひ組織の外に一抜ける たつみ
○薄氷や父の墓参の手桶水 たつみ
◎流感の夜の深さや静けさや 朋子
着ぶくれて「だっこ」と吾子が両手上げ 朋子
立春や休業スーパー三(み)割引(わりびき) 華院
さっと茹で茎もコリコリ生若布 華院
○古書店で友待ち伏せる春隣 走波
風邪癒えてダイアナロスで珈琲を 走波
朝帰りしてダンボール猫の恋 六星

Draw by R nakasuga
○月連れて歩く二月の犬の尻 六星
めすネコのくにゃりと拠りて春立ちぬ 下駄麿

Draw by R nakasuga
◎ポケットの小銭もどかし蜆缶 下駄麿
浮かれ猫鳴き叫んでも家の中 厚子

Draw by R nakasuga
明日からと言い訳多い謝肉祭 厚子
留守宅の庭に立ちおりヒヤシンス えこ
コンビニにコスプレの鬼豆を売る えこ
脳味噌は胡桃の如し春隣 ねむ女
◎春隣掃除ロボットジグザグに ねむ女
冬晴や断たれし鉄路錆びに錆び 新治
声を透く古民家カフェの春障子 新治
まだ夜の巨大怪獣雪の山 七軒
皮裂けて礫は白き梅の花 七軒
老松を支えしワイヤ水温む 茂樹
○菜の花やいただき頃の背となりぬ 茂樹

(句会寸描)
*兼題の「寒明」は、新治さんが一位となり、雑詠は朋子さん、下駄麿さん、ねむ女さんが、一位を分け合った。兼題の方は、分かりやすい句に選が偏ったようだ。それに引きかえ雑詠の方は、個性的な句が多く、選も好みによって分かれた。時間が余ったので、点が入らなかった句に対して、なぜ採らなかったかなど述べていただき、大変興味深い感想がたくさん聞かれた。
*兼題「寒明」
◎大鳥居たてよこに伸び寒の明 新治
一見当たり前のようだが、中七の「たてよこに伸び」の「伸び」がよく効いていて、これから春を迎えようとする「寒の明」と上手くかみ合っている。
○昨日まで無かった更地寒の明け 朋子
最近よく見かける景色である。更地になった時期と「寒の明け」が重なったのが効果的で、寒さの底といった感じがすんなりと伝わってくる。
*当季雑詠
◎流感の夜の深さや静けさや 朋子
「流感」らしい孤独感がにじみ出ている。中七と下五の「や」の切れ字のリフレインも臨場感がある。
◎ポケットの小銭もどかし蜆缶 下駄麿
コミカルで庶民的な感じがして、路地裏の雰囲気が漂っている。リズムがよい。「蜆缶」に季節感がないとの声も出た。
◎春隣掃除ロボットジグザグに ねむ女
「ジグザグに」がいかにも「掃除ロボット」らしい。季語も「啓蟄や」だとつきすぎのような感じがするが、「春隣」で程よい感じになっている。
○薄氷や父の墓参の手桶水 たつみ
淡々と詠まれていて、景もよく見えてくる。「薄氷」にはその時に氷が張っていただけでなく、遠い過去のお父様の思い出のようなものも感じられる。
○古書店で友待ち伏せる春隣 走波
「古書店」がよく効いていて、話が弾みそうな友人と思われる。「春隣」もわくわく感があり効果的である。
○月連れて歩く二月の犬の尻 六星
ユーモラスな感じが伝わってくる。月もここではあたたかな感じがする。
○菜の花やいただき頃の背となりぬ 茂樹
決して食いしん坊のつもりはないが、菜の花に対してこういう見方をする人もいる。
*次回予定
日時 三月三日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題一句と当季雑詠を二句
(茂樹 記)
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