雪でも二月の俳句はもう春なんと。
2018年02月08日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第四十二号(平成三十年二月)
二月四日(日)、立春を迎えたがまさに春は名のみの句会となった。仁井さんご夫妻の「―仁井家へようこそ―」展の会場をお借りして、久しぶりのりう子さんを含め十三名の参加者で六時過ぎに、いつものように始まった。(句会に間に合いませんでしたが、華院さんの欠席投句も追加して掲載いたしました)
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)

兼題「一」 (清記逆順列記)
古本を一冊求め春立ちぬ たつみ
〇一刷毛で描きたし里の棚霞 朋子
春眠し一反もめんと墜落す 六星
一か八(ばち)画家とバクチは春寒し 風外
春めいて一つ一つに色めいて 厚子
春一番吾に優しくなりたき日 走波
春立ちて角砂糖一つミルクティー 麦
二月なり一二三四あと十日 下駄麿
一番を作らぬ教育年明けぬ りう子
一頻り走り尽くして春の猫 ねむ女
薔薇の芽の一つ一つに宿る愛 幸音
◎春寒やべこぼんと鳴る一斗缶 新治
〇菜の花や始発電車の一号車 茂樹
物干せば一雨過ぎて春日和 華院
雑詠(初春)
〇春寒や月やはらかに欠けてゆく たつみ
チョコを手に走る二月の通学路 たつみ
春色の服を買ひたる余寒の日 朋子
春めきて電車の席で化粧かな 朋子
縁側の猫知らぬ顔しじみ汁 六星
脈うちぬ赤子の背のあたたかき 六星
反射する川面の水石二月かな 風外
鳩時計余寒で鳥が家の中 風外
冴返る待合わせまで小走りで 厚子
猫の恋あなた見たことない顔ね 厚子
◎不思議なる耳の形や月おぼろ 走波
春キャベツ厳しき寒さ巻き込んで 走波
〇スクリーンの声遠退きて目借時 麦
鞦韆にすはりて想ふ君のこと 麦
立つ春やひとすじの鬢ほつれをり 下駄麿
春浅しトランクの鍵見つからず 下駄麿
初春やさい銭箱を覗き見る りう子
母からの荷物の中にお年玉 りう子
娘にもヴァレンタインのチョコを買ひ ねむ女
薄氷の下にゆらめくもののあり ねむ女
日が暮れて声がせつない猫の恋 幸音
薄氷踏みて楽しや吾子の声 幸音
春光を集めては撒く髪飾 新治
〇便箋はパステルカラー春兆す 新治
交差点見張る白バイ山笑ふ 茂樹
うららかやインコ手にのせ異国人 茂樹
春愁や行き交ふ人に影うつし 華院
夜も更けてスマホアプリと春の猫 華院
(句会寸描)
*兼題「一」は上位常連の、新治さんが一位となった。雑詠「初春」は大接戦の末、走波さんが頭一つ抜け出し一位となった。兼題は前回に引き続き漢字一文字の題「一」を出したが全て数にかかわる句になった。雑詠は投句を今回から二句に増やした結果、実力伯仲で選を外すのに忍びない句が数多く見受けられた。次回の雑詠は、二句投句の二句選とします。
*兼題「一」
◎春寒やべこぼんと鳴る一斗缶 新治
「べこぼん」のオノマトペがよく写生されている。今やポリタンクが主流となっているが一昔前に使われていた「一斗缶」の様子が懐かしい。作者の名乗りを上げたのが若い新治さんだったので一同大いにどよめいた。
〇一刷毛で描きたし里の棚霞 朋子
霞がかった里の景色を眺めている作者の思いがよく伝わってくる。特に下五を単に「春霞」とか「霞かな」にせず、「棚霞」にして具体的に焦点を絞ったことにより作者として描きたいものがより鮮明となった。
〇菜の花や始発電車の一号車 茂樹
「菜の花」が一足先に咲き誇る房総半島あたりの景を思い浮かべて詠んでみた。実際に「菜の花」を眺めるのは気持ちが良いがそれまでの時間もまた楽しい。
*雑詠(初春)
◎不思議なる耳の形や月おぼろ 走波
上五から中七にかけての「不思議なる耳の形や」がそう云われてみればと心に響いてくる。謎めいた耳の形と「月おぼろ」の取り合わせが面白い。
〇春寒や月やはらかに欠けてゆく たつみ
先日の皆既月食の様子を詠まれているようだ。実際は暦の上ではまだ冬だったが、季語に「春寒」を持ってきたことにより中七の「月やはらかに」がやさしくおだやかに伝わってきて心が和む。
〇スクリーンの声遠退きて目借時 麦
中七の「声遠退きて」と下五の「目借時」の相乗効果により、映画館でうとうとしている様子がよくわかる。誰しもよくあることだが、「目借時」がよく効いていてユーモラスである。
〇便箋はパステルカラー春兆す 新治
この句も作者の名乗りが、男性の新治さんだったので一同ざわめきの声が上がった。春らしい明るい句。
*次回予定
日時 三月四日(日)十八時~二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題を一句と雑詠(仲春)を二句
(茂樹 記)
ーーーーーーーー
今回も私はとても楽しい句会でした。
点が入ってなくてもいいなと思った句もいっぱいありました。
鞦韆(しゅうせん) ブランコの意 春の季語
この字はほぼほぼ誰も読めないよね、わざと仮名を振らなかったのかな。
詠み手は美人さんですから想像します。
新治さんの「春光を集めては撒く髪飾」は、妹さんの結婚式で詠まれた句だそうです。
お兄ちゃんにこんなん詠んでもらえていいですねー。
葉奈の写真に寄せて句会のお仲間から贈っていただきました。
春きざす赤子の顔は仏さま 茂樹
嬰(やや)抱けば掌(て)に拍動よ春日向 新治
揺籃(ゆりかご)や まぶたは天と地のあいだ (伊東音江)
一反もめんが分かりにくかったかと画像を探したらこんなんありました。笑

二月四日(日)、立春を迎えたがまさに春は名のみの句会となった。仁井さんご夫妻の「―仁井家へようこそ―」展の会場をお借りして、久しぶりのりう子さんを含め十三名の参加者で六時過ぎに、いつものように始まった。(句会に間に合いませんでしたが、華院さんの欠席投句も追加して掲載いたしました)
(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)

兼題「一」 (清記逆順列記)
古本を一冊求め春立ちぬ たつみ
〇一刷毛で描きたし里の棚霞 朋子
春眠し一反もめんと墜落す 六星
一か八(ばち)画家とバクチは春寒し 風外
春めいて一つ一つに色めいて 厚子
春一番吾に優しくなりたき日 走波
春立ちて角砂糖一つミルクティー 麦
二月なり一二三四あと十日 下駄麿
一番を作らぬ教育年明けぬ りう子
一頻り走り尽くして春の猫 ねむ女
薔薇の芽の一つ一つに宿る愛 幸音
◎春寒やべこぼんと鳴る一斗缶 新治
〇菜の花や始発電車の一号車 茂樹
物干せば一雨過ぎて春日和 華院
雑詠(初春)
〇春寒や月やはらかに欠けてゆく たつみ
チョコを手に走る二月の通学路 たつみ
春色の服を買ひたる余寒の日 朋子
春めきて電車の席で化粧かな 朋子
縁側の猫知らぬ顔しじみ汁 六星
脈うちぬ赤子の背のあたたかき 六星
反射する川面の水石二月かな 風外
鳩時計余寒で鳥が家の中 風外
冴返る待合わせまで小走りで 厚子
猫の恋あなた見たことない顔ね 厚子
◎不思議なる耳の形や月おぼろ 走波
春キャベツ厳しき寒さ巻き込んで 走波
〇スクリーンの声遠退きて目借時 麦
鞦韆にすはりて想ふ君のこと 麦
立つ春やひとすじの鬢ほつれをり 下駄麿
春浅しトランクの鍵見つからず 下駄麿
初春やさい銭箱を覗き見る りう子
母からの荷物の中にお年玉 りう子
娘にもヴァレンタインのチョコを買ひ ねむ女
薄氷の下にゆらめくもののあり ねむ女
日が暮れて声がせつない猫の恋 幸音
薄氷踏みて楽しや吾子の声 幸音
春光を集めては撒く髪飾 新治
〇便箋はパステルカラー春兆す 新治
交差点見張る白バイ山笑ふ 茂樹
うららかやインコ手にのせ異国人 茂樹
春愁や行き交ふ人に影うつし 華院
夜も更けてスマホアプリと春の猫 華院
(句会寸描)
*兼題「一」は上位常連の、新治さんが一位となった。雑詠「初春」は大接戦の末、走波さんが頭一つ抜け出し一位となった。兼題は前回に引き続き漢字一文字の題「一」を出したが全て数にかかわる句になった。雑詠は投句を今回から二句に増やした結果、実力伯仲で選を外すのに忍びない句が数多く見受けられた。次回の雑詠は、二句投句の二句選とします。
*兼題「一」
◎春寒やべこぼんと鳴る一斗缶 新治
「べこぼん」のオノマトペがよく写生されている。今やポリタンクが主流となっているが一昔前に使われていた「一斗缶」の様子が懐かしい。作者の名乗りを上げたのが若い新治さんだったので一同大いにどよめいた。
〇一刷毛で描きたし里の棚霞 朋子
霞がかった里の景色を眺めている作者の思いがよく伝わってくる。特に下五を単に「春霞」とか「霞かな」にせず、「棚霞」にして具体的に焦点を絞ったことにより作者として描きたいものがより鮮明となった。
〇菜の花や始発電車の一号車 茂樹
「菜の花」が一足先に咲き誇る房総半島あたりの景を思い浮かべて詠んでみた。実際に「菜の花」を眺めるのは気持ちが良いがそれまでの時間もまた楽しい。
*雑詠(初春)
◎不思議なる耳の形や月おぼろ 走波
上五から中七にかけての「不思議なる耳の形や」がそう云われてみればと心に響いてくる。謎めいた耳の形と「月おぼろ」の取り合わせが面白い。
〇春寒や月やはらかに欠けてゆく たつみ
先日の皆既月食の様子を詠まれているようだ。実際は暦の上ではまだ冬だったが、季語に「春寒」を持ってきたことにより中七の「月やはらかに」がやさしくおだやかに伝わってきて心が和む。
〇スクリーンの声遠退きて目借時 麦
中七の「声遠退きて」と下五の「目借時」の相乗効果により、映画館でうとうとしている様子がよくわかる。誰しもよくあることだが、「目借時」がよく効いていてユーモラスである。
〇便箋はパステルカラー春兆す 新治
この句も作者の名乗りが、男性の新治さんだったので一同ざわめきの声が上がった。春らしい明るい句。
*次回予定
日時 三月四日(日)十八時~二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 席題を一句と雑詠(仲春)を二句
(茂樹 記)
ーーーーーーーー

今回も私はとても楽しい句会でした。
点が入ってなくてもいいなと思った句もいっぱいありました。
鞦韆(しゅうせん) ブランコの意 春の季語
この字はほぼほぼ誰も読めないよね、わざと仮名を振らなかったのかな。
詠み手は美人さんですから想像します。
新治さんの「春光を集めては撒く髪飾」は、妹さんの結婚式で詠まれた句だそうです。
お兄ちゃんにこんなん詠んでもらえていいですねー。
葉奈の写真に寄せて句会のお仲間から贈っていただきました。
春きざす赤子の顔は仏さま 茂樹
嬰(やや)抱けば掌(て)に拍動よ春日向 新治
揺籃(ゆりかご)や まぶたは天と地のあいだ (伊東音江)
一反もめんが分かりにくかったかと画像を探したらこんなんありました。笑

コメント