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Story

2007年05月17日
Witch in ladbroke grove 3

そろそろこのストーリーを完結にしようと机に向かっていたら、上の部屋のマネキンの少女がやってきて「そのまま書き続けてください。」と言うのでぼくはまたしばらくストーリーを続けることにした。
でもね、ぼくのストーリーは全部本当の出来事で物語じゃあないんだ。



そもそもぼくの部屋は事実このレンガブロックのフラットのどの階にも存在していないのだ。
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この建物の小便臭い階段には途中に何枚か重たい鉄の扉があるけれどどこにも入れない。魔女のすみかのある階までのぼってきたら暗い廊下を通ってマネキンの少女の部屋の手前にある扉を開けて真っ暗な階段をどんどん下りていくと左にぼくの部屋がある。
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マルコビッチの穴のように外の世界から隔離されたこの部屋から出たい時は必ず開け放しの魔女の寝室の前を通らなければならない。
そして夜中の12時には必ずサリーがやって来てドアの外からぼくを呼ぶので返事をするそのままゆっくりと階段を上がっていく音が聞こえる。
つまり、ぼくは監視されているのだ。

この場所から逃げないように!


次の日、ぼくは暗い階段を上がって扉を開け息を殺してと魔女の部屋の前を通り抜け外に出た。
監視されているけれど閉じ込められているのではないことが分ってぼくは少しほっとした。

外は冷たい雨が降っていた。
ぼくは、70番のバスに乗って美術館に行った。
入り口を入るとすぐに1枚の絵がぼくの目に飛び込んだ。
それは、Devidという中年の脚本家の肖像画でひどく疲れた表情をしていた。
Devidの右手にはカラスが一羽、左には背広を来た不思議な羊男が描かれていて、それはぼくの知っている羊男とは違っていたけれどしかし全く羊男なんだ。
この絵を描いたのは、Paula Regoで、彼女はこの脚本家の肖像を描く時に彼の顔から全く何も見出すことが出来なかったのでそばに羊男を描いたのだと注釈があった。
彼女も羊男を知っているのだ。
ぼくは、ぼくの知っている羊男のほかにも羊男が存在していることに驚いた。

次の部屋で今度は双子のニンニクに出会った。
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1853年から1890年まで生きた画家が1888年に描いた椅子の絵のそばにあるニンニク。彼も双子のニンニクを育てていたようだ。
彼もまた名前を考えたろうか。
ぼくはこの美しい色を使うこの画家のことをしばらく考えていた。
彼が見た美しい風景や彼が愛した弟や画家のこと。
ぼくはその絵の前で少し泣きそうになった。
彼の絵が、あまりに生きることの美しさと悲しさと強さと弱さを訴えかけてくるからか、または降り続く雨のせいでぼくが少しナーバスになっているせいかもしれない。


それからぼくは美術館の隅でぼくの顔を描いた。
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ぼくはぼくがそこにあることを時々確かめなければならないのだ。
君は君でちゃんとそこに存在していることを認めなければいけない。
今、生きているのだから。

ぼくはまた70番のバスに乗って魔女のフラットに帰った。
ぼくは見つけたい。
魔女にディナーにされる前に!


翌日、ドーナツをほおばっている羊男に出会った。
ぼくが雨の日に美術館に行っている間、彼は遠い国に行っていて、ウサギのディナーを食べてきたと興奮して言っていた。
ウサギは鳥肉と同じ味がしたらしい。








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