Story
2007年05月10日
Witch in ladbroke grove 2
ぼくらは、窓の下の古びたソファーに腰掛けてドーナツを平らげた。
羊男のドーナツを食べるとぼくは何故かとても穏やかな気持ちになった。
それから彼は、「また来るよ。」と言って部屋を出て行った。
次はいつ来るのだろう。
ぼくはまた窓から風に揺らぐ大きな樹を見ていた。
僕がはじめてここに来たときこの樹の枝に咲いていた白い花はいつの間にか小さな黄緑色の実に変わっていた。

しばらくしてまたコツコツとドアを小さくノックする音がした。
ドアを開けると背の高い目の大きなマネキン人形のような少女が立っていた。
気がつくと夜の8時を過ぎていたがまだ外は明るい。
少女は僕の部屋の窓に目をやると、「明るい窓ですね。」と言った。
彼女は上の魔女の寝室の隣の小部屋に越してきたらしい。
看護婦をしていること、人を癒すために花の香りについて調べているということ、つかの間の恋を楽しむ相手がいるということを話すとぼくの部屋から出て暗くて長い階段を上がっていった。
次の朝目が覚めると魔女が朝食を持って音もなく僕の部屋にやってきた。
彼女の顔の右半分はまだ縫い目は残っていたが美しく整形されていて最初に会った時あった大きな傷痕は消えていた。残りの左半分のケロイドのような傷もまた整形するらしい。
豆と鶏肉を煮込んだような赤黒い料理ののった皿をぼくに手渡すと、太陽が出ている間は部屋の灯りを絶対につけてはいけないこと、階段の電気をすぐに消さなかったら85ポンドをぼくのデポジットから差し引くとをまくし立てて部屋から出て行った。
彼女の説明によるとぼくはもう7回も階段の電気を消し忘れているらしい。
階上の入り口の廊下も暗く彼女の部屋もまたいつも暗かった。
彼女はイギリスとエジプトの混血で彼女の持ってきた料理はとても辛くてアラブの匂いがした。
翌日目が覚めてぼくは真っ暗な階段を手さぐりで上のキッチンにコーヒーを入れに行った。キッチンもまた薄暗い。
振り返るとサリーがパンのかたまりを持ってやってきて、ぼくの分を切り分け、食べるように言った。ぼくは欲しくはなかったけど彼女と暗いキッチンのテーブルについた。
陽の光が嫌いでキッチンの窓には三枚のカーテンをかけていること、顔の傷がすべて治ったら、故郷のマルタ島に帰ってくるのだと彼女は言った。
マルタ島にはきっとサリーに似た魔女がたくさんいるのだ。
雨が降っている。
ぼくは久しぶりに入り口の鍵を開け、23番のバスに乗ってレスタースクエアまで行った。公園のフェンスの回りに暇そうな似顔絵描きが腰掛けていた。
1枚10ポンドで20分ばかりでかきあげるけどどうかと男が聞いてきた。
ぼくは見てるだけだというと、男はいいよといって笑った。
男の名前はデビッドといい、スペインからやってきてこの近くの劇場の裏に住んでいる。12年もこの街で似顔絵を描いているといった。
この公園でこうやって絵を描いているのが好きなんだと人懐こそうにまた笑った。
気がつくと雨は止んでかわりに強い風が吹いてきた。
大きな花粉を舞い上げて渦巻く風にぼくは目を開けていられないほどだ。
通りの向こうから、羊男がスイスコテージの女の子とやってきた。
彼はふわふわだった両耳のくり毛を一つに束ね無精ひげが生えて少し大人になっていた。
ぼくらは、公園のベンチに腰掛けて、しばらくそれぞれに昨日起こった出来事を話した。
ぼくは、灯りをつけてはいけないフラットの話、羊男は鉛筆を削る仕事をはじめた話、女の子はクロッキーの裸のモデルが腹の出た中年男だという話。
9時を過ぎて辺りが暗くなった頃、魔女はまた音も立てずぼくの部屋にやってきた。
ドアから顔を覗かせて部屋を見回しそして出て行った。
ぼくが部屋の薄明かりで古本屋で50ペンスで買ったシーレの画集を読んでいると、夜中の0時にまたやってきて今度は少しぼくの机のあたりを覗き込んでから、ギラリと光る目でぼくを見て、灯りを消し忘れないようにと言い残して出て行った。
“ That I am true I only say because I …
sacrifice myself and must live a martyr-like existence ”
それから日課のように魔女は夜中にぼくの部屋をのぞきに来た。
ぼくらは、窓の下の古びたソファーに腰掛けてドーナツを平らげた。
羊男のドーナツを食べるとぼくは何故かとても穏やかな気持ちになった。
それから彼は、「また来るよ。」と言って部屋を出て行った。
次はいつ来るのだろう。
ぼくはまた窓から風に揺らぐ大きな樹を見ていた。
僕がはじめてここに来たときこの樹の枝に咲いていた白い花はいつの間にか小さな黄緑色の実に変わっていた。

しばらくしてまたコツコツとドアを小さくノックする音がした。
ドアを開けると背の高い目の大きなマネキン人形のような少女が立っていた。
気がつくと夜の8時を過ぎていたがまだ外は明るい。
少女は僕の部屋の窓に目をやると、「明るい窓ですね。」と言った。
彼女は上の魔女の寝室の隣の小部屋に越してきたらしい。
看護婦をしていること、人を癒すために花の香りについて調べているということ、つかの間の恋を楽しむ相手がいるということを話すとぼくの部屋から出て暗くて長い階段を上がっていった。
次の朝目が覚めると魔女が朝食を持って音もなく僕の部屋にやってきた。
彼女の顔の右半分はまだ縫い目は残っていたが美しく整形されていて最初に会った時あった大きな傷痕は消えていた。残りの左半分のケロイドのような傷もまた整形するらしい。
豆と鶏肉を煮込んだような赤黒い料理ののった皿をぼくに手渡すと、太陽が出ている間は部屋の灯りを絶対につけてはいけないこと、階段の電気をすぐに消さなかったら85ポンドをぼくのデポジットから差し引くとをまくし立てて部屋から出て行った。
彼女の説明によるとぼくはもう7回も階段の電気を消し忘れているらしい。
階上の入り口の廊下も暗く彼女の部屋もまたいつも暗かった。
彼女はイギリスとエジプトの混血で彼女の持ってきた料理はとても辛くてアラブの匂いがした。
翌日目が覚めてぼくは真っ暗な階段を手さぐりで上のキッチンにコーヒーを入れに行った。キッチンもまた薄暗い。
振り返るとサリーがパンのかたまりを持ってやってきて、ぼくの分を切り分け、食べるように言った。ぼくは欲しくはなかったけど彼女と暗いキッチンのテーブルについた。
陽の光が嫌いでキッチンの窓には三枚のカーテンをかけていること、顔の傷がすべて治ったら、故郷のマルタ島に帰ってくるのだと彼女は言った。
マルタ島にはきっとサリーに似た魔女がたくさんいるのだ。
雨が降っている。
ぼくは久しぶりに入り口の鍵を開け、23番のバスに乗ってレスタースクエアまで行った。公園のフェンスの回りに暇そうな似顔絵描きが腰掛けていた。
1枚10ポンドで20分ばかりでかきあげるけどどうかと男が聞いてきた。
ぼくは見てるだけだというと、男はいいよといって笑った。
男の名前はデビッドといい、スペインからやってきてこの近くの劇場の裏に住んでいる。12年もこの街で似顔絵を描いているといった。
この公園でこうやって絵を描いているのが好きなんだと人懐こそうにまた笑った。
気がつくと雨は止んでかわりに強い風が吹いてきた。
大きな花粉を舞い上げて渦巻く風にぼくは目を開けていられないほどだ。
通りの向こうから、羊男がスイスコテージの女の子とやってきた。
彼はふわふわだった両耳のくり毛を一つに束ね無精ひげが生えて少し大人になっていた。
ぼくらは、公園のベンチに腰掛けて、しばらくそれぞれに昨日起こった出来事を話した。
ぼくは、灯りをつけてはいけないフラットの話、羊男は鉛筆を削る仕事をはじめた話、女の子はクロッキーの裸のモデルが腹の出た中年男だという話。
9時を過ぎて辺りが暗くなった頃、魔女はまた音も立てずぼくの部屋にやってきた。
ドアから顔を覗かせて部屋を見回しそして出て行った。
ぼくが部屋の薄明かりで古本屋で50ペンスで買ったシーレの画集を読んでいると、夜中の0時にまたやってきて今度は少しぼくの机のあたりを覗き込んでから、ギラリと光る目でぼくを見て、灯りを消し忘れないようにと言い残して出て行った。
“ That I am true I only say because I …
sacrifice myself and must live a martyr-like existence ”
それから日課のように魔女は夜中にぼくの部屋をのぞきに来た。
★ カモメのジョナサンが居場所みつけ~~~居心地よさそうですね!
彼女、同じ本を定価でかったばかりでショック受けてました。
絵の価値が分からない古本屋でりりーはラッキーでしたけど。
強烈な絵がいっぱいです。
こっちに来られたときに是非めくってみてくださいね。
お茶などしながら。
窓の木は桜のようでちょっと違うような、これももしお時間が合ったら魔女の家を覗きに来て、みてくださいな。
★美と エロスの世界を追求し28歳の若さで逝ったシーレ!
ロンドンでゲットできたのも何かの縁でしょう! また、宝物増やしましたね! 魔女の棲む館 ゼヒ~~。