YUKI TEJIMA 手嶋勇気
2023年09月06日
手嶋勇気 絵画展
2023 9/1-9/8
ご挨拶 2023年9月1日 手嶋 勇気
この度は、「手嶋勇気絵画展」にお越しいただきありがとうございます。
本展では、広島をはじめとした洋 画 家 たちの軌跡を現代のツールを用いてやり直していくという試みのもと、スマートフォンのドローイング用アプリを使用し、出来上 がった画像(CG 画像)を絵の具などを用いて再現する絵画作品を発表します。
会 場 に並んでいるイメージは、どれも僕 自 身 が見た / 知った景 色 が基になっていて、 スマートフォンを片手に広島の風景を描くなかで出来たものです。 また、活動初期からの作品も数点展示しておりますので、僕自身の軌跡も併せて ご覧ください。
広 島 に 住 み 始 め て 1 0 年 以 上 に な り ま す が 、 同 じ 場 所 に 何 年 も 住 ん で い る と その場 所 について少しずつ知っていくもので、なかでも当地の画 家 たちについ て知るようになりました。広島の画家は、凄 惨 な体 験 や反 戦 ・平和を描くかた わら、沢 山 の街並みのスケッチを残しています。彼らのスケッチは、一見すると目 の前の街並みをただ描いたものに過ぎないように見えますが、戦後、ある種のリアリズ ムを形成した画家たちが、なんの目的もなく目の前の風景を描いていたのでしょうか。 " 平和 " にかわっていく街並みを前に、彼らは何を思いながらスケッチをしていた のか。 僕にはそうした行為が、平和になった街並みに喜びを持って描くだけでなく、複雑 な状況下で新しくなっていく街並みを受け入れ、それでも自分なりに愛そうとする 試みに思えます。
引き継げない歴史や感情が沢山ある中で、 絵画を通じて彼らの行為に同化しつつ別 の仕方で描き直していくことが、イメージが固定化し、均質化しつつある都市にとって大 切なことになりうるのではないでしょうか。
発表する新作は、2020 年から今年まで描きためたデジタルスケッチから選んでいま す。過去との接続を求めつつ、現在を重ねるように描いた作品群から、描かれた場所や 意味をゆっくりと紐解き、お楽しみいただけると幸いです。
『ひろしまのスケッチ』
四国五郎の『ひろしまのスケッチ』を手にとったのは、何年前のことだろうか。 それほど昔というわけでもなく、ここ4年くらいのことだと思う。僕が広島で スケッチを描き始めたのは、大木茂さんの旧アトリエを5年ほどまえに訪問してか らだったので、それよりは最近のことだ。とにかく、手にして以来よく持ち歩いて いるので、なかなかボロボロになってきた。
『ひろしまのスケッチ』は、昭和60年に出版された本で、スケッチは本人が何十 年も描き続けたものから選んで載せており、今の風景とは違って見えるものも多い。 もちろん、あえてそうしているところもあるだろう。著書の中のスケッチを「ヒロ シマを手さぐりする過程」と四国は語っているが、意味の探求のほかにも広島の画家 たちにとって、かわりゆく都市を記録することも重要だったはずである。彼らのスケッ チにはもう決して見ることのできない風景が数多くとどめられている。 もちろんいまも都市の風景はかわりつづけている。広島市中心部では広島駅前や 基町付近が大きく変わっているし、2年ほど住んでいた西広島もどんどん新しい装 いに変わっていく最中だ。 圓鍔勝三の《花の精》は、広島城南広場に控えめな水飛沫をだす噴水と共に設置 されていたが、“かわりゆく都市”の渦中でハノーバー庭園の近くに移設され、噴水 は破壊された。そして、去年まで広島城を背にしていた《花の精》たちは、スタジ アムの建設風景を遠方に背負うことになった。あたりまえのことだけど、自分が いま描いているものは刻々と変化するものであるし、ともすれば、ほんとうに簡 単に消えてしまうものであると改めて実感する体験だった。
「都市美も都市理念も、永久に完成ということはない。いわば絶えることのない創 造活動の繰り返しであり、それをするのはだれでもない、広島に住む私たちである。」 と四国はいう。 絶えることのない創造活動の繰り返しによって形成されたこの都市の美しさや理念 は、どんな色や形をしているのだろうか。この街の画家に習いながら、スケッチブッ クを iPhone に持ちかえて風景を描いて以来、僕にとってのスケッチはひろしま を手さぐりする過程になっているのかもしれない。 比治山にある黒松を広島洋画壇の先輩にあたる山路商が描いていた松であろうと 四国が紹介しているので見にいったら、ありし日の姿は微塵も感じられず黒く朽ちた木が雑草の中に埋もれていた。すぐそばの被爆桜が丁寧に保護されているのが印象的だった。




















ここにはランダムに絵を置きましたが実際のカモメの空間は作品と同じく緊張感のあるすがすがしいような配置をされています。
2023 9/1-9/8
ご挨拶 2023年9月1日 手嶋 勇気
この度は、「手嶋勇気絵画展」にお越しいただきありがとうございます。
本展では、広島をはじめとした洋 画 家 たちの軌跡を現代のツールを用いてやり直していくという試みのもと、スマートフォンのドローイング用アプリを使用し、出来上 がった画像(CG 画像)を絵の具などを用いて再現する絵画作品を発表します。
会 場 に並んでいるイメージは、どれも僕 自 身 が見た / 知った景 色 が基になっていて、 スマートフォンを片手に広島の風景を描くなかで出来たものです。 また、活動初期からの作品も数点展示しておりますので、僕自身の軌跡も併せて ご覧ください。
広 島 に 住 み 始 め て 1 0 年 以 上 に な り ま す が 、 同 じ 場 所 に 何 年 も 住 ん で い る と その場 所 について少しずつ知っていくもので、なかでも当地の画 家 たちについ て知るようになりました。広島の画家は、凄 惨 な体 験 や反 戦 ・平和を描くかた わら、沢 山 の街並みのスケッチを残しています。彼らのスケッチは、一見すると目 の前の街並みをただ描いたものに過ぎないように見えますが、戦後、ある種のリアリズ ムを形成した画家たちが、なんの目的もなく目の前の風景を描いていたのでしょうか。 " 平和 " にかわっていく街並みを前に、彼らは何を思いながらスケッチをしていた のか。 僕にはそうした行為が、平和になった街並みに喜びを持って描くだけでなく、複雑 な状況下で新しくなっていく街並みを受け入れ、それでも自分なりに愛そうとする 試みに思えます。
引き継げない歴史や感情が沢山ある中で、 絵画を通じて彼らの行為に同化しつつ別 の仕方で描き直していくことが、イメージが固定化し、均質化しつつある都市にとって大 切なことになりうるのではないでしょうか。
発表する新作は、2020 年から今年まで描きためたデジタルスケッチから選んでいま す。過去との接続を求めつつ、現在を重ねるように描いた作品群から、描かれた場所や 意味をゆっくりと紐解き、お楽しみいただけると幸いです。
『ひろしまのスケッチ』
四国五郎の『ひろしまのスケッチ』を手にとったのは、何年前のことだろうか。 それほど昔というわけでもなく、ここ4年くらいのことだと思う。僕が広島で スケッチを描き始めたのは、大木茂さんの旧アトリエを5年ほどまえに訪問してか らだったので、それよりは最近のことだ。とにかく、手にして以来よく持ち歩いて いるので、なかなかボロボロになってきた。
『ひろしまのスケッチ』は、昭和60年に出版された本で、スケッチは本人が何十 年も描き続けたものから選んで載せており、今の風景とは違って見えるものも多い。 もちろん、あえてそうしているところもあるだろう。著書の中のスケッチを「ヒロ シマを手さぐりする過程」と四国は語っているが、意味の探求のほかにも広島の画家 たちにとって、かわりゆく都市を記録することも重要だったはずである。彼らのスケッ チにはもう決して見ることのできない風景が数多くとどめられている。 もちろんいまも都市の風景はかわりつづけている。広島市中心部では広島駅前や 基町付近が大きく変わっているし、2年ほど住んでいた西広島もどんどん新しい装 いに変わっていく最中だ。 圓鍔勝三の《花の精》は、広島城南広場に控えめな水飛沫をだす噴水と共に設置 されていたが、“かわりゆく都市”の渦中でハノーバー庭園の近くに移設され、噴水 は破壊された。そして、去年まで広島城を背にしていた《花の精》たちは、スタジ アムの建設風景を遠方に背負うことになった。あたりまえのことだけど、自分が いま描いているものは刻々と変化するものであるし、ともすれば、ほんとうに簡 単に消えてしまうものであると改めて実感する体験だった。
「都市美も都市理念も、永久に完成ということはない。いわば絶えることのない創 造活動の繰り返しであり、それをするのはだれでもない、広島に住む私たちである。」 と四国はいう。 絶えることのない創造活動の繰り返しによって形成されたこの都市の美しさや理念 は、どんな色や形をしているのだろうか。この街の画家に習いながら、スケッチブッ クを iPhone に持ちかえて風景を描いて以来、僕にとってのスケッチはひろしま を手さぐりする過程になっているのかもしれない。 比治山にある黒松を広島洋画壇の先輩にあたる山路商が描いていた松であろうと 四国が紹介しているので見にいったら、ありし日の姿は微塵も感じられず黒く朽ちた木が雑草の中に埋もれていた。すぐそばの被爆桜が丁寧に保護されているのが印象的だった。




















ここにはランダムに絵を置きましたが実際のカモメの空間は作品と同じく緊張感のあるすがすがしいような配置をされています。
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