三月の俳句会 春の闇
2023年03月15日
カモメのばぁばぁ「夜の美術館」句会報第百二号(令和五年三月)
三月に入り梅も満開となり、すっかり春めいてきた。山口修平さんの個展『山口修平 作品展 雨』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、初めての彩鳥さんと欠席投句の三名を含めて 十六名となった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「春の闇」
Y路地の哀しい方へ春の闇 舟々
春の闇満つる香りの清(すが)しさや 愛幸
円環を孤独と呼ぶか春の闇 斑猫
あやかしの影あちこちに春の闇 進
墨色でキャンバス染めて春の闇 彩鳥
淋しさに下肢ひつぱられ春の闇 たつみ
草叢の息吹漂ふ春の闇 茂樹
春の闇ステンドグラスの黒と赤 六星
春の闇猫の声色狂おしく ねむ女
誰かしら春闇のごと想ひ秘め 厚子
○春の闇あのひと言のわだかまり 朋子
○春の闇裸体モデルの可動域 麦
つなぐ手の春の闇からかの闇へ 七軒
受験生落ればすぐに春の闇 風外
◎春の闇五枚こはぜをぎゅっと留め えこ
○バス降りてバス見送りぬ春の闇 走波
当季雑詠
春雨の海よ燻んだ銀細工 舟々
豆腐屋の呼び声窓の春茜 舟々
SUN SUNと空から降りる枝垂れ梅 愛幸
窓越しの届かぬ想ひ猫の恋 愛幸
蝮蛇草小さき仏を包みをり 斑猫

沈黙を見る眼のなかに散る桜 斑猫
主なき庭で散りゆく梅の花 進
今生の別れを告げて春の川 進
長閑さは有難きこと思ひ知る 彩鳥
朝掃除毛束にびっくり春の鹿 彩鳥
からうじてつながる糸や蓮華草 たつみ

梅香る里山抜けて吟行へ たつみ
一斉に根元より草駒返り 茂樹
○うららかやならんで進む乳母車 茂樹
草履持ち定位置もよし雛飾り 六星
◎猫の恋あの子の彼はカギ尻尾 六星
◎古書店の「今日の一句」やあたたかし ねむ女
諸々の命蠢く春の闇 ねむ女
木蓮の寂しく見えて声かけり 厚子
うららうららうらうらよの意味を知る 厚子

春風に初めての道教えられ 朋子
○梅の香や古都のはずれの築地塀 朋子
五年ぶりちよつと拗ねたる雛さま 麦
春立ちて光が待つてゐる戸口 麦
錠剤は白しろピンクかぎろへる 七軒
ことごとく九(つづら)折(をり)なるよなぐもり 七軒
春の朝ラ・カンパレラの鐘響く 風外
ジグザグにめじろ飛ぶ飛ぶ梅の花 風外
自転車の立ちこぎ朝の東風へ行け えこ
貯めし脂肪落としに行かう山笑ふ えこ
ひな飾りしまう決断見つからず 走波
厳島霞かかりてさざれ波 走波
(句会寸描)
*兼題の「春の闇」は、大差でえこさんが一位となった。雑詠も六星さんとねむ女さんが一位を分け合った。兼題は、「春の闇」の独特な雰囲気を皆さん個性的に捉えていた。雑詠は、春らしい明るい句とややさびしげな句が混在していた。
*兼題 「春の闇」
◎春の闇五枚こはぜをぎゅっと留め えこ
お稽古事の時の様子であろうか。動きやすい四枚こはぜに比べて、五枚こはぜは簡単には留められないが、丁寧に留める仕草は美しい。昼間ではなく、「春の闇」がよく効いている。
○春の闇あのひと言のわだかまり 朋子
この季節は冬から春への明るい開放感があるが、人間同士はそうはいかない。春がやってくるとともに、その心もほどけていくことが待たれる。
○春の闇裸体モデルの可動域 麦
「裸体モデル」との取合せに意外性がある。「春の闇」に対してどことなく明るさも感じる句になっている。下五の「可動域」が、どこかマネキン的で面白い。
○バス降りてバス見送りぬ春の闇 走波
何処で誰を見送ったのか、いろいろと想像でき、余韻のある句。見送る姿にどこか温かみが感じられて、ほのぼのとしている。
*当季雑詠
◎猫の恋あの子の彼はカギ尻尾 六星
猫好きの人には大いに共感すると思われる。猫の尻尾の動きというのは、ずっと見ていても飽きない。猫同士でも魅力的なのであろう。
◎古書店の「今日の一句」やあたたかし ねむ女
この古書店は、毎日SNSで俳句を発信しているようだ。下五の「あたたかし」でしっかりとファンの心を捉えていることが容易にわかる。
○うららかやならんで進む乳母車 茂樹
乳母車で散歩している姿はよく見かけるが、ならんでいる様子は、お互いに楽しそうで明るく輝いていた。
○梅の香や古都のはずれの築地塀 朋子
一読して景がよく見えてくる。神社仏閣のある町並みは整然として、清らかな川やほのかな山々が目に入り、静かな佇まいを見せている。
*次回予定
日時 四月二日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「花一切」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 四月一日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 四月二日(日)
選句締切 四月五日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
三月に入り梅も満開となり、すっかり春めいてきた。山口修平さんの個展『山口修平 作品展 雨』の会場をお借りして、いつものように十八時開始となった。参加者は、初めての彩鳥さんと欠席投句の三名を含めて 十六名となった。

(◎印は高点句、◯印は次点句 ○○○は原句修正箇所)
(兼題は清記順に列記 雑詠も兼題の清記順に列記)
兼題 「春の闇」
Y路地の哀しい方へ春の闇 舟々
春の闇満つる香りの清(すが)しさや 愛幸
円環を孤独と呼ぶか春の闇 斑猫
あやかしの影あちこちに春の闇 進
墨色でキャンバス染めて春の闇 彩鳥
淋しさに下肢ひつぱられ春の闇 たつみ
草叢の息吹漂ふ春の闇 茂樹
春の闇ステンドグラスの黒と赤 六星
春の闇猫の声色狂おしく ねむ女
誰かしら春闇のごと想ひ秘め 厚子
○春の闇あのひと言のわだかまり 朋子
○春の闇裸体モデルの可動域 麦
つなぐ手の春の闇からかの闇へ 七軒
受験生落ればすぐに春の闇 風外
◎春の闇五枚こはぜをぎゅっと留め えこ
○バス降りてバス見送りぬ春の闇 走波
当季雑詠
春雨の海よ燻んだ銀細工 舟々
豆腐屋の呼び声窓の春茜 舟々
SUN SUNと空から降りる枝垂れ梅 愛幸
窓越しの届かぬ想ひ猫の恋 愛幸
蝮蛇草小さき仏を包みをり 斑猫

沈黙を見る眼のなかに散る桜 斑猫
主なき庭で散りゆく梅の花 進
今生の別れを告げて春の川 進
長閑さは有難きこと思ひ知る 彩鳥
朝掃除毛束にびっくり春の鹿 彩鳥
からうじてつながる糸や蓮華草 たつみ

梅香る里山抜けて吟行へ たつみ
一斉に根元より草駒返り 茂樹
○うららかやならんで進む乳母車 茂樹
草履持ち定位置もよし雛飾り 六星
◎猫の恋あの子の彼はカギ尻尾 六星
◎古書店の「今日の一句」やあたたかし ねむ女
諸々の命蠢く春の闇 ねむ女
木蓮の寂しく見えて声かけり 厚子
うららうららうらうらよの意味を知る 厚子

春風に初めての道教えられ 朋子
○梅の香や古都のはずれの築地塀 朋子
五年ぶりちよつと拗ねたる雛さま 麦
春立ちて光が待つてゐる戸口 麦
錠剤は白しろピンクかぎろへる 七軒
ことごとく九(つづら)折(をり)なるよなぐもり 七軒
春の朝ラ・カンパレラの鐘響く 風外
ジグザグにめじろ飛ぶ飛ぶ梅の花 風外
自転車の立ちこぎ朝の東風へ行け えこ
貯めし脂肪落としに行かう山笑ふ えこ
ひな飾りしまう決断見つからず 走波
厳島霞かかりてさざれ波 走波
(句会寸描)
*兼題の「春の闇」は、大差でえこさんが一位となった。雑詠も六星さんとねむ女さんが一位を分け合った。兼題は、「春の闇」の独特な雰囲気を皆さん個性的に捉えていた。雑詠は、春らしい明るい句とややさびしげな句が混在していた。
*兼題 「春の闇」
◎春の闇五枚こはぜをぎゅっと留め えこ
お稽古事の時の様子であろうか。動きやすい四枚こはぜに比べて、五枚こはぜは簡単には留められないが、丁寧に留める仕草は美しい。昼間ではなく、「春の闇」がよく効いている。
○春の闇あのひと言のわだかまり 朋子
この季節は冬から春への明るい開放感があるが、人間同士はそうはいかない。春がやってくるとともに、その心もほどけていくことが待たれる。
○春の闇裸体モデルの可動域 麦
「裸体モデル」との取合せに意外性がある。「春の闇」に対してどことなく明るさも感じる句になっている。下五の「可動域」が、どこかマネキン的で面白い。
○バス降りてバス見送りぬ春の闇 走波
何処で誰を見送ったのか、いろいろと想像でき、余韻のある句。見送る姿にどこか温かみが感じられて、ほのぼのとしている。
*当季雑詠
◎猫の恋あの子の彼はカギ尻尾 六星
猫好きの人には大いに共感すると思われる。猫の尻尾の動きというのは、ずっと見ていても飽きない。猫同士でも魅力的なのであろう。
◎古書店の「今日の一句」やあたたかし ねむ女
この古書店は、毎日SNSで俳句を発信しているようだ。下五の「あたたかし」でしっかりとファンの心を捉えていることが容易にわかる。
○うららかやならんで進む乳母車 茂樹
乳母車で散歩している姿はよく見かけるが、ならんでいる様子は、お互いに楽しそうで明るく輝いていた。
○梅の香や古都のはずれの築地塀 朋子
一読して景がよく見えてくる。神社仏閣のある町並みは整然として、清らかな川やほのかな山々が目に入り、静かな佇まいを見せている。
*次回予定
日時 四月二日(日)十八時〜二十時
場所 カモメのばぁばぁ
投句 兼題「花一切」一句と当季雑詠を二句
※新型コロナウイルスの状況次第では、通信句会とします。
投句締切 四月一日(土)
投句先 茂樹または六星さん
清記公表 四月二日(日)
選句締切 四月五日(水)
選句連絡先 茂樹まで
(茂樹 記)
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